本研究の目的は、冷戦構造崩壊後に根本的見直しを迫られている日本のODA政策を、ODA原則の確立、援助内容の充実、対象地域の拡大の3つの側面から再検討することであった。平成6年度末には、兵庫県南部地震のため、予定されていた研究会の中止、書棚倒壊による収集資料の一部損失が起こった上、メンバーの多くが家の引越、修繕などに追われる事態となり、成果のまとめが十分行えなかった。しかし、限定的ながら、上記の3側面について行われたグループ別研究や、事例の聞き取り調査などから、以下のような知見を得ることができた。ODA原則に関しては、外圧追従・理念唱道型で場当り的という批判への反省から、これまでの試行錯誤の経験を生かした独自の援助形態の主張を含むと同時に、冷戦終焉後、普遍的目標として注目されつつある人権、民主化、環境、女性の役割、参加型開発など新しいイシューへの配慮のある原則が求められていること。次に、援助内容の充実については、無駄を減らすため、政策過程におけるフィードバックや評価、セクター間やODA以外の援助との調整が特に受け入れ国において緊要であり、それには行政学的知識の応用、技術の移転が有効であること。地域の拡大については、体制崩壊後の混乱が続くロシア・東欧、中東の復興、ラテンアメリカや太平洋島嶼国など各地で日本の援助への要請が高まり、体制差による援助への障壁もなくなってきたが、新しい地域だけに、受け入れ国側の実態にあわない失敗も多い。そこで、これまで以上に、受け入れ国の経済的現状のみならず、ベーシック・ヒューマン・ニーズを知るための相互交流が重要となっている。
【研究分担者】 |
松下 洋 | 神戸大学 | 大学院・国際協力研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
アレキサンダー ロニー | 神戸大学 | 大学院・国際協力研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
初瀬 龍平 | 神戸大学 | 大学院・国際協力研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
木村 修三 | 神戸大学 | 法学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
ALEXANDER Ronni | Kobe Universtiy, Graduate School of International Cooperation Studies, Professor |
SHUZO Kimura | Kobe University, Faculty of Law, Professor |
平野 健一郎 | 東京大学 | 教養学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
五百籏頭 真 | 神戸大学 | 法学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】総合研究(A)
【研究期間】1993 - 1994
【配分額】5,500千円 (直接経費: 5,500千円)