腸管粘膜免疫制御の特殊機構解明を慢性大腸炎および食物アレルギー抑制戦略への応用
【研究分野】消化器内科学
【研究キーワード】
IL-7 / IL-7レセプター / 腸管免疫 / 再生医療 / 腸管上皮細胞 / 骨髄細胞 / 慢性大腸炎 / 食物アレルギー / 植物アレルギー / 粘膜リンパ球 / 骨髄幹細胞
【研究成果の概要】
本研究は我々の研究組織が独自に見いだした腸管粘膜局所におけるIL-7/IL-7レセプターを介した免疫調節機構の考え方を導入し、未だ解明されていない腸粘膜上皮細胞の由来、粘膜局所リンパ球の増殖・分化機構、上皮細胞と粘膜リンパ球の相互作用等、生体防御機構としてのヒト腸管粘膜免疫を明らかとし、その結果腸管免疫機構の特殊性を利用した新規治療法の開発まで視野に入れた萌芽的研究である。過去の研究とは全く出発点を変え、腸管免疫機構の破綻により発症すると考えられる慢性大腸炎、骨髄移植後移植片対宿主反応等における病態解明及び免疫異常の追究を行い、逆に正常の腸管免疫組織の発生・分化、免疫制御機構を追究する新しい試みを行なった。本年度の研究では、1)男性ドナーより骨髄移植を受けた女性レシピエントの大腸内視鏡下腸管上皮生検組織を用いて、性染色体Yがレシピエントの腸管上皮細胞に検出されることを示し、ヒト骨髄由来細胞が腸管上皮細胞に分化することおよび急激な上皮傷害を起こした腸管上皮の再生過程をrescueする役割を果たしている可能性を世界で初めて明らかとした、2)IL-7レセプター陽性の活性化粘膜内T細胞を標的とし、より効率的に除去するために植物毒素サポリンを結合させた抗IL-7抗体を開発し、IL-7トランスジェニックマウス、TCRαノックアウトマウスにおける慢性大腸炎に対する治療効果を明らかとした、という大きな研究の進展があった。IL-7/IL-7レセプターに関する独自の視点を集合させる次年度以降の研究により、ヒト最大かつ最先端に位置する免疫組織である腸管粘膜免疫機構において、新しい免疫組織の発見、免疫統御分子機構の存在が明らかになるばかりでなく、腸管粘膜免疫制御機構の特殊性を利用した新しい慢性大腸炎・食物アレルギーに対する抑制戦略、再生医療が実用化されると考えている。
【研究代表者】