認知症の人との コミュニケーション・チャネルの開発による研究倫理の創成
【研究キーワード】
認知症 / 研究倫理 / コミュニケ―ション / コミュニケーション / コミュニケーション・チャネル
【研究成果の概要】
研究目的は、文書読解時の眼球運動および映像の解析を通して、認知症高齢者の文書読解の特徴を明らかにし、研究の倫理的配慮において、認知症高齢者にとってより読みやすく分かりやすい文書の作成および文書読解時の支援に関する示唆を得ることである。
研究デザインは混合研究法とした。対象者は、アイトラッカーが使用可能な認知症高齢者であり、大学病院に通院中の者6名、通所介護サービスの利用者7名であった。重症度(CDR)は、軽度6名、中等度6名、重度1名であった。眼球運動の計測はTobii Proグラス2を使用し、対象者毎に2回実施した。1度目の計測では文書は原文を使用し、2回目の計測で読みやすさを考慮し文字数等を変更した修正版を使用した。文書は全2種類、どちらも対象者が日常生活上で目にする機会のある文書であった。
文書に設定した関心領域毎の注視回数、注視時間、視線滞在時間を算出・比較し、文書の特徴との相関係数を算出した。質的分析として、アイトラッカーの映像から得た文書読解時の認知症高齢者と研究者及びケアスタッフの言動を分析した。
その結果、文字数の増加は注視回数・注視時間の増加と関連していた。軽度・中等度の対象者では、自ら読み始めるなど文書を読むものと認識しており、読む部分を指で押さえる、読む速度を落とす等の工夫をしていたが、助詞や漢字の読み間違え、インデントや改行部で読む位置を見失うことで読み進める際の困難を生じていた。重度の対象者では文書の認識が困難であった。介護者は、相づちをうつ等の言動を示した。認知症高齢者への文書提示時には、情報量を限定し、一行以内に表す、インデントは多用しない、相づち等で読みを支持する等の周囲の支援を受けられる環境を整える、文書の認識が困難な場合にはイラストの使用など他の方法での情報提供を検討する、といった支援の重要性が示唆された。
【研究代表者】