疫学と数理モデルを融合したコウモリ由来感染症のリスク分析
【研究キーワード】
コウモリ / 疫学解析 / ウイルス / 細菌 / 寄生虫 / 遺伝子 / 抗体 / 疫学調査 / リスク分析 / 網羅的解析 / 病理解析 / 感染症 / 疫学 / 数理モデル
【研究成果の概要】
コロナウイルスやエボラウイルス、ニパウイルスなど、世界的に問題となっているウイルスの自然宿主としてコウモリは知られている。今後も、コウモリから新たなウイルス感染症が発生する可能性は否定できない。また、コウモリを介した細菌や寄生虫の拡散リスクについては情報が少ない。コロナウイルスについては、SARS-CoV-2関連ウイルスが日本を含む東南アジアに生息するコウモリから検出されていることから、令和3年度はコロナウイルスを中心に調査を行った。
フィリピンのルソン島北部にあるビアクナバト国立公園で捕獲されたコウモリ9種120匹から採取した血液、小腸及び腸管スワブを対象にリアルタイムPCR法及びRT-PCRによりコロナウイルスのゲノム検出を行うと共に、ELISAを用いてSARS-CoV-2特異的抗体の検出を試みた。リアルタイムPCRの対象領域はN領域、RT-PCRの対象領域にはORF1a、ORF1b、S 領域を設定し、N領域はSARS-CoV-2検出用リアルタイムPCR、ORF1a及びS領域はSARS-CoV-2検出用nested PCR、ORF1b領域はコロナウイルスを広く検出可能なconventional PCRを行った。
小腸サンプルを対象としたリアルタイムPCRでは3サンプルで陽性が確認されたが、RT-PCRでは遺伝子の増幅が確認されなかった。糞便サンプルについては、ORF1b及びS領域を対象としたPCRでは遺伝子の増幅は確認されなかったが、ORF1a領域を対象としたPCRでは120サンプル中52サンプルで遺伝子増幅が認められ、そのうち43サンプルで塩基配列が決定され、SARS-CoV-2と98%以上の相同性を示した。SARS-CoV-2特異的抗体は検出されなかった。今後、生態情報を含めた疫学解析を行い、コロナウイルスを保有するコウモリの特徴について明らかにしていく。
【研究代表者】