単分子鎖の自己凝縮によるナノ秩序体の創出
【研究分野】高分子構造物性(含繊維)
【研究キーワード】
折り畳み転移 / 高次構造相転移 / 単一分子鎖 / コイル-グロビュール転移 / レーザートラップ / 長鎖DNA / 一次相転移 / ナノ結晶 / コイルーグロビュール転移 / 単分子観察 / 温度依存性 / 蛍光顕微鏡 / ポリアミン / 潜熱 / ボルツマン分布
【研究成果の概要】
本研究課題「単分子鎖の自己凝縮によるナノ秩序体創出」を通じ、長鎖DNAに様々な化学種を添加すること(濃度依存性)で生じるコイルーグロビュール転移が不連続な転移であることを蛍光顕微鏡を用いた単分子観察により明らかとなった。また、温度変化に伴うDNAの高次構造変化の観察により、空間的に広がったコイル状DNAと凝縮したグロビュール状DNAの存在比率の温度依存性が中性高分子溶液中とポリアミン溶液中では逆転する事を見出した。特に、ポリアミン(スペルミジン)存在下でのコイル-グロビュール転移の温度依存性は今までの高分子物理学での"教科書"的予測とは逆の現象であった。このコイル-グロビュール転移に伴うエントロピー変化(ΔS=32k(kはBoltzman定数))を見積もり、単一の長鎖DNA分子のコイル状態からグロビュール状態への相転移を統計力学的に考察することにより、この相転移に伴うエントロピー変化を理論的に評価した。そして、この相転移におけるエントロピーのわずかな正の変化(32k)は、対イオンの交換による並進エントロピーの増加と他の寄与(コンフォメーションの変化等)によるエントロピーの減少との競合の結果であると結論された。また、YAGレーザーにより単一の長鎖DNA分子凝縮体のトラップと局所加熱を同時に行った際のDNA分子の高次構造変化について研究を行い、DNA分子はレーザーの焦点位置で凝縮したグロビュール状態と広がったコイル状態を周期的に行き来するという大変興味深い現象を発見した。これは、非平衡開放系から周期的振動を取り出すという、これまでに例のない画期的な実験である。この振動現象発生の機構については、簡単なモデルに基づいた計算機シミュレーションによって説明することに成功し、この振動現象がリミットサイクル運動であることが示唆された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
小穴 英廣 | 京都大学 | 大学院・理学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
村田 静昭 | 名古屋大学 | 大学院・人間情報学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1998 - 2000
【配分額】13,000千円 (直接経費: 13,000千円)