新規抗癌・抗感染症薬を目指したフラーレン誘導体の創製
【研究分野】創薬化学
【研究キーワード】
フラーレン / 抗がん剤 / 抗エイズ薬 / 抗C型肝炎薬 / HIV逆転写酵素 / C型肝炎ウィルスRNAポリメラーゼ / アポトーシス / がん細胞増殖抑制 / HIV逆転写酵素阻害 / C型肝炎ウィルス増殖抑制 / がん細胞増殖抑制効果 / 抗菌活性
【研究成果の概要】
1.フラーレン誘導体のがん細胞増殖抑制機構の解明
ジメチルピロリジニウム置換基を有するフラーレン誘導体(1)ががん細胞増殖抑制効果を示すことをすでに明らかにしているが、その機構の解析を行った。ヒト白血病由来HL-60細胞を1で処理するとアポトーシスの特徴であるDNAのラダー化、クロマチンの凝集、細胞周期のSub G1期での停止が観察され、さらに、カスパーゼ3の活性化、カスパーゼ9の活性化、ミトコンドリアからのシトクロムc放出を引き起こすが、p53の誘導はおきないことを見出した。多くのがん細胞ではp53が欠損しているためp53以外の経路でアポトーシスを誘発する化合物は抗がん剤リード化合物として有利と考えられる。
2.HIV逆転写酵素阻害活性の高いプロリン型フラーレン誘導体のデザインと合成
フラーレン骨格に結合したピロール環に3つのカルボン酸を有する誘導体(2)をリード化合物としてコンピュータードッキングシミュレーションも用いて様々な誘導体をデザイン、合成した。その結果ピロール環2,5位の2カ所にカルボン酸を有する誘導体(3)の活性が2よりも高く、カルボン酸を1つにすると活性が低下することが明らかとなった。これらの誘導体の阻害活性は現在抗HIV薬として用いられているネビラピンの100倍以上活性が高かった。
3.スルホニウム型フラーレン誘導体の抗C型肝炎ウィルス活性
スルホニウム型フラーレン誘導体(4)はフラーレン誘導体1と同等のC型肝炎ウィルスRNAポリメラーゼ阻害活性ならびにC型肝炎ウィルス増殖抑制効果を示した。4は細胞毒性も低く抗C型肝炎薬のリード化合物として有望であることを明らかとした。
3年間の研究で新規抗がん薬、抗HIV薬、抗HCV薬の有望なリード化合物を創製できた。
【研究代表者】