食の記憶エングラムネットワークの同定と介入操作によるその機能的役割の解明
【研究キーワード】
食記憶 / 記憶エングラム / 食認知行動制御 / 食行動 / 食嗜好性 / 食物価値 / 前頭前野 / 食経験 / 認知制御 / 記憶固定化 / 脳領野 / マウス / 食認知制御
【研究成果の概要】
本課題ではマウス食記憶モデルと食物価値変容モデルを用いて、食物を記憶するエングラム細胞・回路を網羅的に同定し、食記憶に基づき食物価値を決定し変容させる機構を解明することを目的とした。前年度に確立した食物新規性恐怖モデルを用いて食記憶エングラムを構成する神経ネットワークの同定を試みた。絶食後のマウスにチーズを30分間給餌し、この24時間後にチーズを再び30分間給餌するとその摂食量が有意に増加したことから、新奇性恐怖が認められた。そこで、食記憶エングラムの神経ネットワークを網羅的に同定するために、免疫組織染色法を用いて神経活動依存的に発現誘導されるc-Fos発現を指標にして新規餌摂食時に活性化される脳領域を同定した。対照群に比べて、チーズ摂食群では前頭前野、島皮質、嗅周皮質、海馬、分界条床核などで有意なc-fos陽性細胞の増加が観察された。従って、新規食物(チーズ)摂取時に前頭前野を中心とした食記憶エングラムが構築されることが初めて示唆された。一方、マウスにおいて低嗜好性食物の嗜好性が増加する条件づけ味覚嗜好学習課題を新たに開発し、食嗜好性増加機構を解明することを試みた。条件づけ場所嗜好性テストでは快情動を誘導する薬物と特定の場所との条件づけにより場所嗜好性を誘導する。そこで、このパブロフ型条件づけの原理に基づき,キニーネ溶液摂取直後にニコチンを腹腔内投与した結果、対照群に比較してニコチン投与群は有意に高いキニーネ水溶液の摂取割合を示し、キニーネ溶液に対する嗜好性学習効果が観察された。以上のように、本研究では、苦味物質に対する嗜好性が向上する条件づけ味覚嗜好学習課題の確立に成功した。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2020-07-30 - 2023-03-31
【配分額】6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)