環形動物シリスにおける無性生殖様式「ストロナイゼーション」の分子発生基盤の解明
【研究キーワード】
ストロナイゼーション / 頭部形成 / パターン形成遺伝子 / 繁殖様式 / 性決定 / 生活史 / 無性生殖 / 放精抱卵 / 神経系 / 表現型可塑性 / ボディプラン / 放精放卵
【研究成果の概要】
環形動物門多毛綱シリス科の種では、出芽のように個体の一部から生殖腺を持つ個体(ストロン)が繁殖のために出現し、親個体から分離したのち遊泳し、放卵・放精を行う(ストロナイゼーション)。本研究課題では、シリスの示す無性生殖様式であるストロナイゼーションの発生機構を明らかにすることを目的としており、後胚発生 において体軸の途中に頭部や尾部が生じる仕組みについて焦点を当てる。2021年度は、これまでに確立した飼育系およびストロナイゼーションの誘導系を用い、ストロナイゼーションの過程で起こる形態・組織変化に基づくステージングを詳細に行い、その過程での遺伝子発現解析を行った。
また、ストロンが分離する以前から尾部の再生も始まることを明らかとし、新たに生じる尾を「二次尾部」として、その形成機構を探っている。また、トランスクリプトームデータに基づいた遺伝子データベースが構築され、発生や再生、繁殖に重要な役割を果たす遺伝子群の配列を網羅的に把握し、その成果を論文として公表した。
ストロナイゼーションの過程での遺伝子発現解析では、ストロンの頭部形成時には身体のposterior側で頭部形成遺伝子が発現上昇する一方、Hox遺伝子群の発現に大きな変化はなく、ストロン頭部となる体節は、「尾部のアイデンティティを保ったまま頭部形成が起こる」という特殊なシステムを有することが示唆された。
また、佐渡において2019年度に採集した分岐するタイプのシリスは、形態学的および分子生物学的解析の結果、新種であることが明らかとなり、キングギドラシリスRamisyllis kingghidoraeと命名し国際誌に公表した。本種においてもトランスクリプトーム解析を推進し、論文投稿中である。今後も可能な限り佐渡でも採集を行い、キングギドラシリスの飼育も試み、分岐する体制の発生過程についても可能であれば解析を行いたい。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
越川 滋行 | 北海道大学 | 地球環境科学研究院 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
林 良信 | 慶應義塾大学 | 法学部(日吉) | 講師 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】44,980千円 (直接経費: 34,600千円、間接経費: 10,380千円)