海洋表層における生物ケイ酸の生産と溶解のバランス
【研究分野】環境動態解析
【研究キーワード】
地球科学 / 海洋生態 / ケイ素 / 珪藻 / 安定同位体 / 質量分析 / 生物ケイ酸 / 植物プランクトン / ケイ藻 / 地球化学 / ケイ酸
【研究成果の概要】
ケイ素安定同位体を用いて海洋表層での珪藻類による生物ケイ酸(珪藻殻)の生産速度と珪藻殻からのケイ酸溶解速度を測定する手法を開発し、西部北太平洋亜寒帯域の表層における生物ケイ酸の生産と溶解のバランスについて研究を行った。
ケイ素安定同位体比の測定法として二重収束型誘導結合プラズマ質量分析計の適用について検討した結果、バックグラウンド補正を適切に行うことにより、従来用いられていた負イオン表面電離型質量分析法と同程度以上の測定精度が得られることが明らかになり、簡便な前処理のみでケイ素同位体比を測定する手法として確立した。
春季に珪藻類の顕著なブルームが出現する北海道東沖親潮・混合域において有光層内の珪藻群集によるケイ酸取り込みと生物ケイ酸溶解速度を測定した結果、ブルーム終焉後は珪藻による生物ケイ酸の水柱あたりの生産に比べて溶解が上回っており、溶解した溶存ケイ酸が珪藻の増殖に寄与していると考えられた。
西部北太平洋亜寒帯海域でネット採集した現場の珪藻群集のケイ酸殻を用いた溶解実験を行い、種組成によって溶解速度に違いが認められること、溶解速度の違いから珪藻殻を溶解しやすい部位と溶解しにくい部位に分けて考えることが適切であること、溶解途中における殻構造の形態的変化の種による違いが珪藻殻の表面積:体積比の変化を生み出して溶解速度を決める一因になっている可能性を示した。
これらの結果から海洋表層におけるケイ素の循環を見積もったところ、珪藻によって生産された生物ケイ酸の大部分が表層で溶解し再循環していると推測されたが、実際には深層水中にも溶解途中の珪藻殻が観察されたことから、糞粒など珪藻殻を溶解から保護した状態で表層から深層に輸送する過程の寄与も無視できないと考えられた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
古谷 研 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
小畑 元 | 東京大学 | 海洋研究所 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2005 - 2007
【配分額】16,350千円 (直接経費: 15,600千円、間接経費: 750千円)