ミュゼオミクスの挑戦:過去の個体数変動における進化的救助の貢献を推定する
【研究キーワード】
標本 / 進化的救助 / ミュゼオミクス / 徘徊性昆虫 / 迅速な進化 / 保全 / オミクス
【研究成果の概要】
気候変動・生息地断片化・外来種などの人間活動に関連する環境変化が深刻さを増しており、それによる生物の絶滅が急速に進行している。それに対し、環境ストレスに適応する、野外生物の迅速な進化によって絶滅が回避される進化的救助という新しい理論が注目を集めている。進化的救助とは、環境ストレスに対する生物の迅速な適応進化のポテンシャルを予測し、自然生態系における適応進化を制御することを通して、野外生物の保全に繋げようというこれまでに人類が成したことのない新しい挑戦である。しかし実践は容易ではない。そもそも自然生態系での実験検証が困難であり、それが進化的救助の研究の進展を妨げている。そこで本提案は、ミュゼオミクスという新興アプローチからこの分野のブレークスルーを起こそうというものである。博物館の自然史標本の生化学・分子情報を網羅的に抽出し、それにより進化史や遺伝的多様性の変遷などを推定しよういうのがミュゼオミクスである。本研究は、広域長期モニタリングによって集積された標本を対象とすることによって、集団や群集という個体よりも上位の生物階層パラメータまでも紐付けた新規なミュゼオミクスに取り組む。すなわち、過去から現在までの地球気候変動(気温上昇)・適応的な対立遺伝子頻度の変化・集団サイズの変化の3つを関連付けて解析することによって、野外生物における進化的救助の実態と意義を世界に先駆けて明らかにすることが目的である。
本年度は、この目的に対する基礎的な準備を進めた。まず、野外調査により、クロツヤヒラタゴミムシ野外個体の採集と飼育を行い、ロングリード解析の基礎となる良質で大量のゲノムDNAの抽出をすることが出来た。また、クロツヤヒラタゴミムシの標本の一部からDNA抽出を試みた。標本からのDNA抽出は部分的に成功し、標本の年代が古くなるほど抽出できる量は少なくなる傾向にあることがわかった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
日浦 勉 | 東京大学 | 大学院農学生命科学研究科(農学部) | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2021-07-09 - 2023-03-31
【配分額】6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)