微生物の適応変異誘発メカニズムと潜在能力活用に関する研究
【研究分野】応用微生物学
【研究キーワード】
進化 / 適応 / 変異修復 / フェノール / 遺伝子 / 発現調節
【研究成果の概要】
Comamonas testosteroni TA441 はフェノールを唯一炭素源として2〜3週間馴養することにより不可逆的にフェノール資化能を獲得する。これは、本菌は完全なフェノール分解酵素とフェノール応答転写活性化因子の遺伝子群(aph遺伝子群)を持つが、野生株では転写抑制因子AphSによりaph遺伝子群が発現抑制されており、馴養中にaphS遺伝子に突然変異が起こることで抑制が解除されるためである。昨年度の結果から、TA441のフェノール分解系は実験室環境の高フェノール濃度、高通気条件での増殖には不向きであり、自然生態系の低フェノール濃度、微好気条件での生存に適していることが示された。本年度はaph遺伝子が生理的に機能していることを検証するために、野生株と各種変異株の共培養を行い、培養後の占有率からCompetitive index (競争力指数)を求め、aph遺伝子の生存への寄与を調べた。栄養培地では、フェノール分解酵素を欠失したaph遺伝子欠損株の生育が不利になり、aph遺伝子が確かに生存に有利に働いていることが示された。逆に、aph遺伝子を高発現するaphs(リプレッサー)変異株では高濃度(5mM)のフェノール存在時に生育が不利になった。この原因は、高濃度のフェノールとフェノール酸化酵素の存在が酸化ストレスを引き起こすためと予想された。これらの結果は、実験室レペルでの増殖を指標とした場合には機能が見えずクリプティックと思われた遺伝子でも、Active but not culturable (ANC)のような形での生存に寄与していることを示唆するものであった。
【研究代表者】
【研究種目】萌芽研究
【研究期間】2007 - 2008
【配分額】3,500千円 (直接経費: 3,500千円)