ポリネーターの衰退による間接的なチョウ類の絶滅-草原性昆虫保全の新たな視点
【研究キーワード】
保全 / ヒメシロチョウ / ポリネーター / 絶滅危惧種 / 遺伝的多様性 / 草原性 / マイクロサテライト / チョウ類 / 草原性チョウ類 / マイクロサテライトマーカー / ツルフジバカマ / 結実率 / 生活史
【研究成果の概要】
生息調査では,2019~2021 年の間に熊本5 カ所,青森3 カ所,福島4 カ所,宮城3 カ所,岩手1 カ所で本種の成虫や卵を確認した.ツルフジバカマの結果率については,青森ではすべての地点で50%以上であったが,福島3 カ所,熊本1 カ所,大阪では0~44%と低い地点が見られた.結実率は青森の2 カ所で60%前後であったが,その他は全体に低く,6~46%であった.発芽率は青森の2 地点で42%以下だったほかは,いずれの地点でも50%以上で比較的高かった.前年度に開発した9個のマーカーを用いてSTRUCTURE 解析を行い,遺伝構造を評価した結果,現時点の解析結果で、本種は熊本個体群とそれ以外の2 つのクラスターに大きく分かれることが示された.さらに,青森,福島,宮城,岩手の個体群を用いて解析すると,地点ごとに4つのクラスターに分かれた.遺伝的多様性を比較した結果,Hs について熊本では0.14 未満と低かったが他の個体群では0.46 以上と高く,岩手が0.57 と最も高かった.AR についても熊本では1.4 未満と低かったが,他の個体群では2.5 以上と高く,岩手が3.21 と最も高かった.以上の結果から,本種の生息が確認された地点でも,寄主植物の繁殖に関わる結果率,結実率,発芽率は,必ずしも高くはなく,寄主植物の衰退の要因となっている可能性が考えられた.マイクロサテライトマーカーの開発と解析の結果から,本種は個体群ごとに分化しており,本州の個体群ではある程度の遺伝的交流があるものの,熊本個体群では遺伝的多様性が低く,個体群の孤立が進んでいると考えられた.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
上田 昇平 | 大阪府立大学 | 生命環境科学研究科 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
矢後 勝也 | 東京大学 | 総合研究博物館 | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2019-04-01 - 2022-03-31
【配分額】15,860千円 (直接経費: 12,200千円、間接経費: 3,660千円)