環境傾度がブナ科樹木の被食防衛戦略と植物-植食者の相互作用系に及ぼす影響の解明
【研究分野】生態
【研究キーワード】
ブナ科植物 / 被食防御 / タンニン / 窒素 / 土壌養分 / 光 / 炭素 / どんぐり / 被食防衛 / フェノール類 / 誘導防御 / 葉 / 種子 / 環境傾度 / 標高 / ブナ科 / アロケーション / 食害 / 栄養
【研究成果の概要】
強い被食を受けた後に新たに出現した葉で、二次代謝物が増加し、窒素含有率が減少する誘導防御反応が知られている。環境傾度とブナ科4樹種の被食防御の関係を研究した。誘導防御反応の違いが食葉性昆虫の標高依存的な大発生を引き起こすという仮説を検証するための実験を行った。標高の異なる5箇所のブナで100%の奪葉処理をおこない、翌年の葉について、窒素・タンニン・フェノールの含有率、LMA、含水率、被食度を対照区と比較した。大発生しない場所では、奪葉個体葉の質は悪化した。奪葉前も後も、大発生する場所では葉の質がよいだけでなく、奪葉個体の方が対照個体よりも葉の質が良くなり、より高い被食を受けていた。大発生する場所では、奪葉によるN不足よりもC不足がより強く働いたことが原因と考えられた。そこで、コナラとアベマキの当年生実生を異なる栄養条件で育成し、奪葉処理を行った。奪葉処理後の個体は、葉の窒素濃度は奪葉前を上回り、個体窒素濃度ですらコントロール個体の値を上回った。この結果は無施肥個体でも見られた。これらの結果は、奪葉によって窒素を失う以上に、呼吸による炭素損失が大きかったことを示唆する。さらに、個体窒素濃度を個体C/Nバランスの指標とし、地上部/地下部比などのアロメトリーを比較した。しかし、奪葉個体の挙動はC/Nバランスの変化だけでは説明できず、別の観点が必要であることが示唆された。ドングリ子葉部の切除実験では、光合成器官を含む地上部に投資する資源量を相対的に増加されて実生を形成することで,結果的に高いRGRを実現していた。
【研究代表者】