病期分類に基づいた犬の脊髄再生医療に対する包括的治療戦略の開発と応用
【研究キーワード】
犬 / 間葉系幹細胞 / 脊髄損傷 / 再生医療 / 骨髄脂肪細胞周囲細胞(BM-PAC) / 病期分類
【研究成果の概要】
急性期脊髄損傷を対象とした実験では、他家移植による治療効果を検討した。免疫不全マウス脊髄損傷モデルに犬BM-PACを投与した場合と比較し、正常な免疫を持つマウスに犬BM-PACを移植した場合は、治療効果が低減した。また、ビーグル皮下に他家BM-PACを移植したところ、T細胞やマクロファージの浸潤がみられた一方で、自己細胞の場合は、それらの細胞の浸潤はみられなかった。これらのことから、間葉系幹細胞であるBM-PACはホストからの免疫を受けており、他家移植は自家移植と比較し、移植効果を得ることが難しいと考えられた。他家移植は急性期症例に対する迅速な治療法として期待できるが、免疫抑制剤などとの併用が必要であることが示唆された。
一方、慢性期脊髄損傷を対象とする実験では、これまで、BM-PACから神経細胞様の形態と遺伝子発現特性を有する細胞の誘導に成功しており、本年度はさらに、誘導後の細胞が神経組織を構築する能力を有するかどうかを検証するため、ニューロスフェアへの誘導を行い、3次元培養により構築された組織の神経組織としての性状を評価した。その結果、平面培養と比較して、3次元培養を行なった場合は、未分化マーカーであるSOX2やOCT4の発現上昇がみられ、近年、ヒト神経幹細胞マーカーとして提唱されているMusashi1の発現上昇も確認され、3次元培養ではより未分化な神経幹細胞様細胞がニューロスフェア内に誘導されると考えられた。ニューロスフェアは培養を継続すると成熟神経細胞マーカーの発現もみられるようになり、BM-PACから神経幹細胞様細胞を含むニューロスフェアを形成可能と考えられた。また、一部のスフェアにはTyrosine HydroxylaseやChATの発現が上昇しており、誘導されたニューロスフェアから、特定の機能を有するニューロンへ分化誘導が可能であることが示唆された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
藤田 直己 | 東京大学 | 大学院農学生命科学研究科(農学部) | 特任助教 | (Kakenデータベース) |
西田 英高 | 大阪府立大学 | 生命環境科学研究科 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
伊藤 大介 | 日本大学 | 生物資源科学部 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2019-04-01 - 2022-03-31
【配分額】16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)