イネの生育にアーバスキュラー菌根菌が与える影響の遺伝・生理・生態学的研究
【研究キーワード】
イネ / トウジンビエ / 菌根菌 / 根系 / 接種試験 / 共生 / ストレス / 水 / 品種
【研究成果の概要】
圃場試験(畑および水田)・ポット試験(畑状態)・セルトレイ試験(畑状態および湛水状態)を行い、水分条件のアーバスキュラー菌根(AM)菌感染率に対する影響を、根の深さ、品種間差、菌根菌接種効果にも着目しながら評価した。顕微鏡で観察された、観察根数当たりの染色された菌糸と樹脂状体による感染率には、畑圃場の中での水分条件の有意差は認めれなかったが、水田圃場では、畑圃場に比べて感染率が著しく低下した。一方、qPCRによる定量では、畑圃場・畑状態の中でも、灌水量の低下による感染の減少や、土壌水分プロファイルの影響が示唆された。また、顕微鏡観察とqPCRのどちらの方法によっても、土壌深層(約30cm)での感染率の方が、表層よりも高い傾向が認められた。イネ2品種間では、コシヒカリはハイブリッドのとうごう4号よりもより高い感染率を示し、種内での遺伝変異の可能性が示唆された。また、乾燥により適応したトウジンビエと比較すると、畑状態での潅水量や土壌プロファイルによる感染率の変化がイネでは大きい傾向であった。
販売されているAM菌資材DKを接種したが、感染率に対する効果と、生育に対する効果は明瞭でなかった。別の資材RT_FとRT_Pでは、出芽後の初期の感染率を向上させたので、市販資材の間でも効果が異なる可能性が示唆された。
また、水田と畑圃場のほか、草地圃場も加えて、AM菌叢をDGGEで分析し菌叢の差異を確認し、さらに、ゲルからバンドを切り出し、配列を解析してレファレンスとともに系統樹上に図示した。畑圃場には、草地圃場と水田圃場の菌叢が属するクレード以外の菌も見られ、畑地に生息するAM菌は水田や草地よりも多様と考えられた。一方で、異なる土壌間で出芽後の感染率を比較すると、水田圃場の土の方が、畑圃場の土や、市販の培土よりも高かった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
津釜 大侑 | 東京大学 | アジア生物資源環境研究センター | 准教授 | (Kakenデータベース) |
大友 量 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 | 中央農業研究センター | 上級研究員 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)