農業イノベーションの先端動向と農業・農村構造変動に関する学際的国際共同研究
【研究キーワード】
農林水産業経営 / 経営革新 / イノベーション / 情報通信技術ICT / バイオテクノロジーBT
【研究成果の概要】
第1に、イノベーションとデジタル農業の関連に着目して、作目別の農業イノベーションの詳細な事例分析を全体に位置づける枠組みを提示すると共に、独自の全国農業法人アンケート調査に基づいて、農業イノベーションの現状について明らかにした。例えば、プロダクト・イノベーションでは、新技術開発力に「強み」をもち、一定以上の売上高があり、売上高や利益率の明確な目標を設定している農業法人は、イノベーションの実現が進んでいる。また、作目や現状の利益率がイノベーションの実現に影響を及ぼしている。イノベーションが「阻害された」主要な要因は、「能力のある従業員の不足」、「新しい製品・サービスへの需要(売上規模)が不確実」であり、イノベーションの推進には人材育成が重要であることを示している。さらに、農業イノベーションを誘発する技術革新として注目されているデジタル農業の特徴、導入要因を効果やリスクについて明らかにした。
第2に、作目別に農業イノベーションの現状と課題を明らかにした。具体的には、精密農業の源流となった畑作、デジタル技術とゲノム技術の実用化が最も進んでいる酪農、近年、スマート農業の導入が注目されている稲作を対象とした。生産技術面で特徴が異なる酪農と稲作の比較検討により、デジタル農業とイノベーションの関係およびスマート農業技術の導入状況の違いの背景・要因を考察した。
第3に、海外主要国におけるイノベーションの新たな動向を対象として、政策の視点も含め、農業イノベーションの新たな潮流と社会変革について考察を行った。具体的には、OECD主要国を主な対象とし農業イノベーションの全体像を概観すると共に、ゲノム技術について現状と課題を明らかにした。さらに、ドイツやフランスについては、イノベーションと環境政策との関連に着目して現状と課題を明らかした。
【研究代表者】