生物合成系の再設計による革新的核酸系化合物の創製
【研究キーワード】
核酸 / 生合成 / 放線菌 / ヌクレオチド / 遺伝子 / 酵素 / 核酸系化合物 / 反応機構
【研究成果の概要】
本研究課題では、核酸系天然化合物の生合成酵素の精密機能解析を行い、得られた機能情報をもとに各種生合成酵素の理論的機能改変を行うことで新規な核酸系化合物を創出することを目的としている。2021年度ではまず、放線菌Streptomyces angustmyceticus NBRC 3934株の生産するangustmycin類の生合成機構の詳細を明らかにし、次いでこの生合成機構を改変することで、angustmycin誘導体の生産系の構築を行うことを目指した。それまでに、新規脱水酵素Agm6がangutmycin Cからangustmycin Aへの鍵変換反応を担い、特異な構造であるexo-glycalを形成することを見出した。そこで、Agm6をコードする遺伝子の周辺を探索することにより、angutmycin Cの生合成に関与する遺伝子の機能解析を行った。その結果、agm1からagm6の6個の遺伝子によって生合成されることを、これら6個の遺伝子を異種放線菌であるStreptomyces albusに導入したところangutmycin Cとangustmycin Aの生産が確認されたことから結論づけることができた。また、Streptomyces decoyicusのゲノム配列にも、agm1からagm6の相同遺伝子が存在することも明らかにした。さらには、脱水酵素Agm6がangutmycin Cからangustmycin Aへの変換反応を触媒する際に必要な補酵素はNAD+であり、NADP+は機能しないことも明らかにした。
本研究成果は、核酸系抗生物質angustmycinの生合成遺伝子を初めて同定し、その生合成経路を推定したものである。また、天然化合物としては稀なexo-glycal構造の形成機構を明らかにしたものとして重要である。これらの成果をまとめて、The Journal of Antibiotics誌で発表した。別の核酸系天然化合物であるA-94964の立体化学については、国際共著として発表することができた。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)