エンドファイトと土着微生物との共生系を利用すると安定して土壌病害を抑制できる
【研究キーワード】
エンドファイト / 土着微生物 / 共生 / 土壌病害防除
【研究成果の概要】
1. DSE-バクテリア間相互作用の解明と育苗への利用:DSE単独でも植物に病害防除等のストレス耐性を付与することが明らかとなっている。さらに圃場レベルでの実用化を見据え、菌類の特別な栄養要求や走化性を利用して選択的に分離する釣餌法を改変し、DSE菌糸圏に定着する有用バクテリアであるA. pusenseおよびその近縁種の獲得に成功した。
2. DSE -バクテリア共生系の共生および病害抑制機構の解析:Dark Septate Endophyte (DSE) は宿主植物に対し生育促進効果や環境ストレス耐性を付与することが知られており、育苗期にDSEであるVeronaeopsis simplex Y34をのトマトに接種し、地上部乾燥重量を有意に増加させている。本研究での解析の結果、対照区とV. simplex Y34の比較では、230個の発現変動遺伝子が確認され、うち178個はV. simplex Y34接種によって高発現していた。その中には、植物の防御応答に関する遺伝子や硝酸輸送体遺伝子が含まれており、硝酸輸送体遺伝子に関しては、植物の生育促進の大きな要因として示唆された。
3. DSE-バクテリア共生系を利用した圃場での環境微生物叢の制御と病害抑制効果の検討:DSEであるV. simplex Y34を定着させたトマトをハウス内で栽培し、トマト根圏や根内、また周辺土壌の微生物叢の時空間的変化を解析した。菌類叢は処理区・対照区間で大きく分かれており、V. simplex Y34が優占することによる影響が大きく示された。しかしその影響は時間経過とともに小さくなり、両区の菌類叢の類似度が増していった。一方、細菌叢はハウス土壌・根部・根圏土壌といった試料間差が大きく、処理区・対照区間の差は小さかった。また、時間が経過しても異なる試料間の微生物叢の類似度は変化しなかった。
【研究代表者】