シロウリガイ種群の種分化過程に関する分子系統学的研究
【研究分野】系統・分類
【研究キーワード】
シロウリガイ / 種分化 / 分子系統学 / 深海性還元環境 / 冷〓水域 / 相模湾 / 南海トフラ / イントロン
【研究成果の概要】
相模湾で発見された深海性二枚貝シロウリガイ(Calyptogena soyoae)集団は、単一種から成ると考えられていたが、ミトコンドリアDNAの塩基配列解析から、遺伝的に異なる2種類のタイプの個体が混在していることが示された(以下、A型・B型とする)。また、沖縄トラフ伊平屋海嶺で、A型個体のみからなる個体群が発見されている。さらに、昨年度南海トラフ竜洋海底谷からもシロウリガイが発見された。
本研究では、まず竜洋海底谷のシロウリガイ18個体について遺伝子解析をおこない、すべてA型個体であることを示した。次にA型とB型が別種であるかどうかを判定するために、十分な個体変異を示す核遺伝子上のマーカーの検索をおこなった。その結果、エロンゲーションファクター1α遺伝子のイントロン領域が、この目的に適していることがわかった。そこで相模湾29個体(A型17個体、B型12個体)、伊平屋18個体、竜洋16個体のシロウリガイについて、同領域の塩基配列を決定・比較したところ、6ヶ所で塩基配列の多型が見られた。そのうち5ヶ所で塩基組成がA・B型間で有意に異なっており、両者の間に生殖的隔離が存在することが示唆された。しかし、相模湾A型で4個体(24%)、B型で2個体(17%)、さらにA型個体のみから成る竜洋海底谷集団で1個体(6%)が、逆の型の核遺伝子を持っていた。これに対し、伊平屋では、全て個体がミトコンドリアDNAに対応する核DNA配列を示した。核遺伝子とミトコンドリアDNAの不一致は、雑種形成による遺伝子の交換に由来する可能性もある。
今後、さらに多くの個体について、遺伝子データを収集するとともに、軟体動物分類専門家との共同研究により、今回得られた結果をシロウリガイの分類に、どの様に反映させるべきかを検討する予定である。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1996
【配分額】1,100千円 (直接経費: 1,100千円)