レ-ザ-照射NMR法による金属錯体の励起状態に関する基礎的・応用的研究
【研究分野】無機・錯塩・放射化学
【研究キーワード】
ルテニウム / レ-ザ- / 錯体 / 光化学 / 光誘起効果 / 配位子置換 / NMR / ウラニル / 光誘起反応 / 配位子交換反応 / 速度と機構 / 光励起 / 分子内交換反応 / レ-ザ-誘起反応 / 反応と機構
【研究成果の概要】
本年度はレ-ザ-照射NMRを用い、ルテニウム(II)錯体の光励起による常磁性効果と反応の光誘起効果に関して以下に示す成果を得た。トリス(ビピリジン)Ru(II)のNMR測定では、レ-ザ-照射(照射波長514.7nm)により、ビピリジン3位置におけるHーNMRシグナルの低磁場側シフトと線幅の広がりが見られた。これは、Ru(II)の光励起により生成した三重項励起状態による常磁性シフトと常磁性緩和によるものである。すなわち、励起種に配位した配位子のNMRシグナルでは大きな常磁性シフトと常磁性緩和が予測されるが、レ-ザ-照射により励起種が定常的に存在するため上記の効果をもたらしたと結論された。同じ錯体を含む溶液にトリス(ビピリジン)Ru(III)を加えると、Ru(II)とRu(III)の間で電子交換反応が起こることがNMR測定によって確認された。この試料をレ-ザ-照射NMR装置を用いて測定したところ、光誘起効果により反応速度は著しく加速された。また、反応速度はレ-ザ-出力に比例して増加することが分かった。このことはRu(II)の励起種とRu(III)との反応が速いため、レ-ザ-照射によりこの励起種を触媒にしてRu(II)とRu(III)との間の電子交換反応が加速されたと説明される。このように、NMR法により測定される速い電子交換反応において、光誘起効果が確認されたのは本研究が初めてである。さらに、ビス(ビピリジン)Ru(II)ジアダクト(例えばジピリジン錯体において、アダクト配位子が光照射によって置換されることがレ-ザ-照射NMR装置により明らかにされた。この場合、アダクト配位子のNMRシグナルは時間と共に減少した。レ-ザ-照射NMR装置はこの種の光誘起反応にも有効であることが分かった。
【研究代表者】