大強度超低速ミュオン源による表面・ナノ結晶科学への応用
【研究分野】薄膜・表面界面物性
【研究キーワード】
ミュオン / 超低速ミュオン / 薄膜 / ライマンα / μ^+SR / 共鳴イオン化法 / ペロブスカイト / 加速器 / 偏極 / スピン / 低速ミュオン / 物性 / 水素原子 / 表面 / レーザー
【研究成果の概要】
加速器で得られる高速なミュオンを低速化する手法として、我々は少々複雑な過程でミュオンを減速させている。きっかけは、高エネルギーのミュオンをタングステン(W)に打ち込むと、4%もの高い効率で、電子と正のミュオンが結合したミュオニウム原子(Mu)が完全に熱化して、真空中にでてくる事を実験的に発見したことに始まる。その骨子は第1に、真空中での熱エネルギーMu生成から始まり、第2にこの真空中に漂いでてきたMuをレーザー光によって効率良くイオン化し、電子を剥ぎ取り、第3に生成した超低速ミュオンを効率よく引き出すというものである。KEK-MSLで得られる500MeV陽子シンクロトンの陽子ビームと比して、60倍もの陽子ビーム強度を誇る英国ラザフォードアップルトン研究所、理研-RAL研究施設において、ライマンα(Lα)光共鳴法を用いた超低速ミュオン分光装置(u^+SR実験装置)を組み上げ、実際に薄膜研究を行うのが目的である。本科学研究費を交付して頂き、u^+SR実験装置の日本からの移設も完了し、u^+SRの最初のテスト実験を行うことができた。その結果、超低速ミュオンビームが薄膜や、多層膜などのあらたな対象にも十二分に威力を発揮することができる超低速ミュオンビーム用uSR分光装置を作り上げることを達成できた。現在、ペロブスカイト化合物のSrTiO_3(011)基盤上で成長させたNd_0.5Sr_0.5MnO_3で最近発見されたAnti-Phase Antiferroorbital Orderingのu^+SR研究にとりかかっているところである。既に、超低速ミュオンを用いたゼロ磁場uSR実験での結果では、室温で1〜0.05usec^-1程度の長い緩和が観測された。しかしながら220Kでは、ミュオンの偏極はほぼ完全に失われた。これはV. V. Krishnamurthyらによるバルク体のZF測定と合致し、パラマグネッチックな絶縁相から強磁性への転移が超低速ミュオンを使った薄膜の実験でデモンストレートされたといってよいであろう。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
松田 恭幸 (松田 泰幸) | 高エネルギー加速器研究機構 | 理化学研究所・岩崎先端中間子科学研究室 | 先任研究員 | (Kakenデータベース) |
PAVEL Bakule | 高エネルギー加速器研究機構 | 理化学研究所・岩崎先端中間子科学研究室 | 協力研究員 |
池戸 豊 | 研究員 | (Kakenデータベース) |
下村 浩一郎 | 高エネルギー加速器研究機構 | 物質構造科学研究所 | 研究機関構師 | (Kakenデータベース) |
西山 樟生 | 高エネルギー加速器研究機構 | 物質構造科学研究所 | 教授 | (Kakenデータベース) |
ARAKI Wakako | RIKEN | Advanced Meson Science Laboratory | Contract Researcher |
牧村 俊介 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 | 物質構造科学研究所 | 技師補 | (Kakenデータベース) |
永嶺 謙忠 | 高エネルギー加速器研究機構 | 物質構造科学研究所 | 教授 | (Kakenデータベース) |
松本 貴裕 | スタンレー電気 | 研究開発センター | 主任研究員 |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2004 - 2006
【配分額】45,760千円 (直接経費: 35,200千円、間接経費: 10,560千円)