tRNA使用頻度による新規翻訳調節機構の探索とメカニズムの解明
【研究キーワード】
tRNA / 翻訳 / タンパク質合成 / 遺伝暗号解読 / コドン / リボソーム
【研究成果の概要】
前年度では翻訳中ペプチジルtRNAの抽出法を確立させたが、レポーター遺伝子のテストコドンを解読したペプチジルtRNAのみを精製する方法を確立することができなかった。そのため、今年度は一部方針を変更し、各アミノ酸のコドンを1種類に限定したレポーター遺伝子を大腸菌細胞内または無細胞翻訳系で発現させ、抽出したペプチジルtRNAのtRNA部分を配列解析することによってアイソデコーダーの使用頻度を算出する方法の確立に取り組んだ。レポーター遺伝子は3種類設計した。また、前年度に課題となったペプチジルtRNA以外のtRNAの非特異的な混入を解決する方法として、選択的デアシル化とデアシルtRNAの3’末端処理を組み合わせることによってペプチジルtRNAのみをアダプターにライゲーションする方法を試行錯誤し、最終的にその確立に成功した。これらの方法を用いて、上記のレポーター遺伝子を大腸菌細胞または無細胞翻訳系によってそれぞれ発現させ、ペプチジルtRNAを抽出し、NGS解析によって各tRNAの定量解析を行った。この時、tRNAプール中の各tRNAの存在量比を測定するため、未処理の全tRNA画分についても定量解析を行っている。その結果、無細胞翻訳系では、特定のアイソデコーダーtRNAにしか読まれないコドンを有したレポーター遺伝子ではそれぞれ対応するtRNAの相対量が顕著に高く検出されたことから、実験系が機能していることが証明できた。また、複数種のアイソデコーダーtRNAによって読まれるコドンについては、アイソデコーダーtRNAの使用頻度はtRNAプール中の存在比とは異なり、コドン種によって特徴があることが分かってきた。一方、大腸菌細胞のデータではそのような差が見られなかった。これはレポーター遺伝子の発現量が内在遺伝子の発現量を凌駕できずそれら由来のペプチジルtRNAによるものと考えられた。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)