TGF-βスーパーファミリーの因子のシグナル伝達機構と生物学的作用
【研究分野】細胞生物学
【研究キーワード】
TGF-β / 骨形成因子 / 癌抑制遺伝子 / シグナル伝達 / 増殖抑制 / Smad / セリン・スレオニンキナーゼ / 遺伝子ターゲッテイング / レセプター / アクチビン / アポトーシス
【研究成果の概要】
1. Tkv結合蛋白質クローニングとその哺乳類細胞での機能解析:ショウジョウバエのセリン-スレオニンキナーゼ型レセプターであるThick veins(Tkv)に結合する蛋白質をtwo-hybrid法で検索し、DIAP1(Drosophila apoptosis inhibitor-1)をクローニングした。
2. Smadのシグナル伝達機構における役割:我々はSmadファミリーの分子をその構造と働きから、特異型、共有型、抑制型の3種類に分類できることを明らかにした。また新しいSmad分子であるSmad6をクローニングした。Smad6は他のSmadの作用を抑制する抑制型Smadであることが明らかとなった。
3. 骨形成因子のシグナル伝達におけるSmadの役割と遺伝子導入による解析:アデノウイルスベクターに組み込んだSmad1やSmad5を骨芽細胞前駆細胞に導入してその作用を調べた。Smad1やSmad5は単独で細胞に感染させても骨芽細胞への分化誘導活性は低いが、低濃度のBMPや活性化型レセプターを加えると、作用の劇的な増強が見られた。
4. TGF-βシグナルに関与するSmad3の変異体の機能解析と腫瘍形成能:Smad3の407番目のアスパラギン酸のグルタミン酸への変異を作り、その作用を検討した。変異型Smad3はTGF-βのシグナルを伝達しないだけでなく、優勢抑制型変異体として作用した。変異型Smad3を大量に発現している細胞ではTGF-βの増殖抑制作用に対し抵抗性になっていた。さらにこれらの細胞をコラーゲンゲルの上で3次元培養するとコラーゲンゲルの中に細胞が浸潤していく像が見られた。
5. シグナル伝達分子の遺伝子ターゲッテイング:BMPレセプターII型遺伝子およびSmad2のターゲッテイングを行った。いずれも発生初期の段階で致死的であった。
【研究代表者】