電気化学発光を利用した高感度免疫センサーの開発
【研究分野】生物・生体工学
【研究キーワード】
電気化学発光 / 陰極 / ルミノール / 抗原-抗体反応 / ウシ血漿 / マレイミド標識法 / 結合選択性 / 抗体抗原反応 / 量子収率 / 反応次数 / 抗体 / 抗原 / 過酸化水素 / インジウムースズ酸化物
【研究成果の概要】
グルタルアルデヒドを用いてルミノールを分子量と荷電の異なる抗原(ヒト血清アルブミン(HSA)、免疫グロブリンG(IgG)、リゾチーム(Kys))に標識した。それぞれ対応する抗体と反応させたのち、過酸化水素(H_2O_2)を添加し、電気化学発光フローセル内のインジウム・スズ酸化物(ITO)を蒸着したガラス電極上で陰電位を印加することによって反応させた。その結果、生じた電気化学発光強度は、ルミノール標識抗原の種類とは無関係に、抗体の量によって増大することを確認した。この現象を利用することによって、抗原に対する抗体の定量が可能になる。ウシ血漿中におけるヒト抗体の定量では、水溶液系での発光強度と比較して、全体的に発光強度の減少が確認された。これは、血漿中の鉄イオンとルミノールの発光に必要なH_2O_2が反応し、H_2O_2濃度が減少したためと考えられる。しかし、抗体量増加に伴い電気化学発光強度の増大が確認され、適切な補正やH_2O_2のキレート剤の添加により、血漿中における均一系免疫定量が可能である。また、マレイミド標識法により抗原にルミノールを標識した。マレイミド法を用いてルミノールを標識したHSAやIgGでも、グルタルアルデヒド法と同様に、抗体濃度の増加に伴い発光強度が増大し、定量の可能性が示唆された。さらに、グルタルアルデヒド法においては確認されなかった抗原抗体全体反応の結合選択性が確認された。また、ウシ血漿中における抗体定量では、発光強度はHSA、IgGともに水溶液系に比較して低い値を示した。しかし、抗体濃度増加に伴う発光強度の増大が確認された。したがって、発光反応阻害物の抑制など適切な補正を行うことにより、血漿系での抗体定量が可能である。従来の免疫測定法に不可欠な洗浄操作を必要としない、新しい抗体定量法が確立された。またフローセルを用いて連続的な抗体定量も過去に開発された例がなく、独創的なものである。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1994 - 1996
【配分額】2,100千円 (直接経費: 2,100千円)