選択的に置換された同位元素のNMRによる有機伝導体の低温電子物性の研究
【研究分野】固体物性Ⅱ(磁性・金属・低温)
【研究キーワード】
NMR / 同位元素置換 / 有機伝導体 / 有機超伝導体 / 金属-絶縁体転移 / 極低温物性 / 反強磁性転移
【研究成果の概要】
^<13>C-NMR測定により、一連の(BEDT-TTF)_2Xに見られる金属相、超伝導相、磁気的絶縁相の多様な電子相は、電子相関の効果と強い相関があることを明らかにした。特に、金属(超伝導)-非金属転移がBEDT-TTF分子のダイマー構造と深い関係にあり、これがモット転移であることを明らかにした。さらに、κ-(BEDT-TTF)_2Cu[N(CN)_2]Brの重水素体が超伝導相と非金属相の正に境界上に位置することを見出した。非金属相側の磁性を詳しく調べた結果、低温でスピンキャントを伴う反強磁性磁気秩序を起こすことがわかった。単決勝^<13>C-NMRスペクトルより、スピンはダイマーに局在し、最も単純なコメンシュレイト構造を示すことが明らかとなった。
超伝導の発現機構に直結する電子対の対称性を明らかにするために、κ-(BEDT-TTF)_2Cu[N(CN)_2]BrについてNMR緩和率と電子比熱の温度依存性を測定した結果、d波的な電子対形成を支持する実験結果を得た。さらに、電子比熱係数の磁場依存性も、d波超伝導に期待される磁場の1/2乗依存性に従う結果を得た。
(DMe-DCNQI)_2Cuにおける有機π電子と銅のd電子の混成が織り成す電子状態を明らかにするために、DMe-DCNQI分子の=N-CNの3つのサイトを^<15>Nあるいは^<13>Cに置換し、それぞれのサイトで^<15>N-NMRと^<13>C-NMR実験を行った。その結果、混成から起る複数のバンドの存在を実証し、それぞれのバンドのスピン磁化率の温度依存性が大きく異なることを見出した。さらに、d電子との混成がない(DI-DCNQI)_2Agを新たに合成し、これがスピンギャップのない絶縁体であり,ウィグナー結晶的な4k_FCDWを示すことを明らかにした。これは、長距離クローン相互作用の重要性を実証するものである。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
河本 充司 | お茶の水女子大学 | 理学部 | 助手 | (Kakenデータベース) |
中澤 康浩 | 岡崎国立共同研究機構 | 分子科学研究所 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】一般研究(B)
【研究期間】1994 - 1995
【配分額】7,400千円 (直接経費: 7,400千円)