サンゴが雲を作り気候を変化させているのか?遺伝子解析技術を用いた検証
【研究キーワード】
サンゴ / DMSP / DMS / 遺伝子
【研究成果の概要】
海岸で感じる「磯の香り」の原因である硫化ジメチル(DMS)は、さまざまな植物プランクトンが浸透圧調節物質として生成するジメチルスルホニオプロピオン酸(DMSP)から、主に細菌や植物プランクトン自身が持つDMSPリアーゼという酵素により、DMSへと転換される。DMSは大気中で水蒸気の凝結核となり雲を形成するので、太陽光を遮ることによる地球冷却効果の役割を果たすと考えられている。我々は造礁サンゴのゲノム情報の比較解析から、ある特定のサンゴ(ミドリイシ属)でのみ、DMSPリアーゼに似たアミノ酸配列を持つ遺伝子(DMSPリアーゼ様遺伝子)の数がゲノム上で大きく増加していることを発見した。ミドリイシ属サンゴに多く存在するDMSPリアーゼ様遺伝子は、実際にDMSを産出することができるのだろうか。遺伝子解析を中心に解明を進める。
これまで造礁サンゴを含む刺胞動物のゲノムから、DMSPリアーゼ様遺伝子の存在が確認されている。DMSPリアーゼ様遺伝子は他の動物群にも存在するのか、確認した。これまでに我々が解読したサンゴや褐虫藻のゲノム情報や、現在利用可能な全てのトランスクリプトームデータベース(NCBI TSA)からDMSPリアーゼ様遺伝子を探索し、分子系統解析を行った結果、動物タイプのDMSPリアーゼ様遺伝子は、刺胞動物以外の動物群には確認されないことが明らかになった。さらに造礁サンゴとは系統的に離れたクラゲの1種にも存在が確認されたことから、刺胞動物のDMSPリアーゼ様遺伝子の進化の起源はとても古いことが示唆された。さらにミドリイシ属のサンゴの一種、コユビミドリイシから、合計13個のDMSPリアーゼ様遺伝子の全長配列を単離することに成功した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
山下 洋 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 | 水産技術研究所(長崎) | 主任研究員 | (Kakenデータベース) |
鈴木 豪 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 | 水産技術研究所(長崎) | 主任研究員 | (Kakenデータベース) |
亀山 宗彦 | 北海道大学 | 地球環境科学研究院 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2020-07-30 - 2023-03-31
【配分額】6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)