西洋近代における情報伝達に関する総合的研究
【研究分野】西洋史
【研究キーワード】
ヨーロッパ / 近代 / 情報伝達 / 情報政策 / 宣伝 / 情報網 / 西洋近代
【研究成果の概要】
本研究の最終年度にあたる平成12年度には、通算で第6回となる研究集会を、7月22-23日に高松で行った。この第6回の個人研究発表のテーマは、「十月革命とポーランド人共同体のネットワーク」(中山昭吉)と「食情報の伝達媒体としての料理本」(南直人)であった。中山は、ロシア十月革命の前夜に、当時ロシアへの併合によって国内の最大少数民族になっていたポーランド人が、ロシアにおける革命的情勢を積極的に作り出し、革命勢力において不可欠の支持勢力となっていたことを明らかにした。そして、このような活動を可能にしたのは、ポーランド語新聞の発行とそれを用いたプロパガンダによっていることを、豊富な事例とともに示した。また南は、食生活史研究において有力な可能性を持つ料理本を取り上げ、そこには、調理技術、栄養知識、食習慣などの種々の食情報が盛り込まれており、とくに19世紀以降、近代の市民生活を形成する上で、重要な役割を果たしたと報告した。ともに重要な知見を含んだ興味深いもので、本研究の取りまとめとして刊行された「研究成果報告書」に、その大要が収録されている。
上記の研究打ち合せ会では、分担テーマについて、研究報告の概要を持ち寄り検討した。分担テーマによる研究の詳細は、研究成果報告書に譲るとして、全体としては、所期の目的であったヨーロッパ近代における情報伝達についての総合的な検討作業が達成された。ヨーロッパにおける情報伝達は、近代のグーテンベルクの印刷術に始まり、17・18世紀における定期刊行物の成立と発展、およびそれに伴う読み手の大衆化によって飛躍的に拡大した。しかし一方で、19・20世紀に入ると、こうした公式の情報伝達とは異なる伝達手段も意味を持った。本研究はこうした流れを明らかにするとともに、時代や場所で異なる独自性や情報伝達の多様性をも、示すことができた。
【研究代表者】