改革開放期の中国における政策/制度イノベーション:動機付け・実施体制・地域間競争
【研究キーワード】
地方イノベーション / 政治的応答性の動機付け / 支配の正当性 / 昇進基準 / 一党支配 / 成功モデル / イノベーションの推進体制 / イノベーションの手法 / イノベーション / 動機付け / 実施体制 / 地域間競争 / 比較分析
【研究成果の概要】
本研究は政治的応答性を地方イノベーションの前提とし、政権と権力エリートの動機付け、実施体制と手法から中国の地方イノベーションの構造的な特徴を明らかにしようとするものである。2021年度の研究は中国の政治的応答性を中心に下記の研究作業を行った。
西側諸国の政党、政治エリートが政治権力を勝ち取るため、有権者、世論との対話で独自の政策を提示し、また有権者は定期的にその努力と実績を検証する。他方、現代中国の政治的応答性は両面性を持つ。国民の要求、特に民主化の要求は一党支配の維持と矛盾し、中共はあらゆる手段でそれらを排除しようとしてきた。他方、経済成長や社会発展は国民の支持を調達し、支配の正当性を高める効果がある。そのために、中共は様々な制度改革によって政治的応答性を高めようとしている。
昇進制度は中共が政治的応答性を高め、経済や社会の分野で実績を築き上げる有力な手段として活用しようとしている。鄧小平時代以降、中共はエリート選抜で従来以上に学歴、専門知識と職務経験を重視し、権力エリートは革命世代からテクノクラート型への転換を図ってきたと同時に、実績評価システムで量的指標を導入し、実績指向の昇進制度を取り入れてきた。
政策/制度のイノベーションは政治的応答性を高め、実績を築き上げていく最重要手段である。その成功モデルは上級機関と世論から評価され、政治エリートは昇進につながる場合が多い。昇進→イノベーションの模索→成功モデルの拡散→政治的応答能力の向上といった因果メカニズムがどこまで機能しているかを解明するため、地方イノベーションの代表的な事例を収集・解析し、データベースの構築方法を検討した。
【研究代表者】