水の量子化学効果を取り込んだ自由エネルギー計算の開発と応用
【研究キーワード】
水素イオン / プロトン輸送 / 分子動力学 / 量子化学計算 / 溶媒和効果 / 自由エネルギー / 分子動力学計算 / 分子シミュレーション / 凝縮系
【研究成果の概要】
プロトン移動は、我々に非常に馴染みが深く重要な現象であるにも関わらず、分子シミュレーションでは最も取り扱いが難しい問題である。なぜなら一般的にバルクのような巨大な系を扱う際、量子力学(QM)と分子力学(MM)的モデルを組み合わせたQM/MM法を用いてターゲットの分子のみにQMモデルを適用し計算コストを落とすのが一般的であるが、第一にプロトンはグロータス機構で説明されるように、水分子との共有結合の生成と消滅を繰り返されることにより輸送される。したがって、QMモデルを適用すべき分子が時間発展に伴って変化するため、従来のQM/MM法を適用することができない。
これまでに我々は溶媒に対するアダプティブQM/MM法を拡張して、溶質までアダプティブに取り扱うプロトンのダイナミクスシミュレーションを実現した。さらに当該手法を自由エネルギーなどの定量的な計算に応用していくためには、余剰なプロトンに外力をかけて、その挙動をコントロールする必要がある。これまでに我々は、余剰なプロトンの座標を表現するような関数系を組んだが、用いる分子モデルに依存したハイパーパラメータが含まれており、シミュレーションの安定性に深く寄与している。今年度はこれら仮想粒子の制御方法を実装化した上で、これらハイパーパラメータをチューニングし、実際に自由エネルギー計算に適用するためのベンチマークをおこなった。その結果、外力をプロトンに付加した上で安定した分子動力学計算を実行することも可能になった。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)