19・20世紀転換期フランスにおける排外主義の変容―パリ地域での選挙の分析
【研究キーワード】
フランス / 近代史 / 選挙 / 外国人 / パリ / 移民 / ナショナリズム
【研究成果の概要】
令和3年度は、前年度同様フランスでの史料調査を実施することができなかった。そのため、引きつづき関連する先行研究の調査をおこなったほか、これまでに閲覧していた史料を分析、考察した。
19・20世紀転換期フランスにおけるナショナリズムについては、地域社会における実相が十分に知られておらず、選挙区レベルでの個別研究の蓄積も待たれている。政治運動や選挙の局面についてはB・ジョリをはじめとする近年の研究が重要な成果を生み出しているが、それが選挙区の日常生活とどのように関連していたのか、いわば社会と政治の相互連関はいかなるものであったのかを知ることが重要であり、それが本研究の目標でもある。
この点で本年度は、研究代表者がかつてパリ市議会議員・セーヌ県議会議員選挙を研究した際に収集していた選挙関連史料を、ブーランジスムの最中であった1890年5月の改選を中心に読み直し、オンラインで閲覧した新聞史料や近年の研究とあわせて考察をおこなった。その結果、ブーランジスムの浸透のあり方にはパリ市内でも選挙区ごとに大きな差があったこと、その差には運動に積極的に関わった人物の個性が相当に影響していたことが判明した。またパリ市内の選挙区に比べて、郊外選挙区では選挙区内固有の問題とりわけ都市基盤整備の遅れなどが取り上げられる傾向にあったことも明らかになった。パリ郊外は市内に比べてブーランジスムの得票率が高かったが、得票率の違いに現状認識の違いが関わっている可能性もある。この知見は、令和4年度に刊行される予定の単著にて公表する予定であるが、本研究の枠内でも考察を深める考えである。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)