黄体ホルモンによる子宮内膜の細胞分化の分子基盤
【研究分野】産婦人科学
【研究キーワード】
プロゲステロン / 着床 / 子宮 / 子宮腺筋症 / 子宮内膜 / リモデリング / 再生医療 / 胚浸潤 / 細胞増殖 / KRAS変異 / ゲノム / プロゲスチン / 黄体ホルモン / 子宮内膜症 / 妊娠 / 細胞老化 / マクロファージ / 子宮再生 / 脱細胞化 / STAT3 / ノックアウトマウス
【研究成果の概要】
子宮とその関連疾患におけるプロゲステロン(P4)の作用機構を解析した。P4が子宮内膜管腔上皮の細胞増殖抑制に作用すると胚接着部位の上皮細胞の断片化とトロホブラストによる貪食に作用し胚浸潤を促すこと、管腔上皮剥離と胚生存シグナル活性化を通じて胚浸潤を可能にする子宮内膜間質のHIF2αの作用にはP4シグナルは直接影響しないこと(JCI 2018)、子宮腺筋症のKRAS変異で病変のP4抵抗性が誘導されること(Nat Commun 2019)、子宮のリモデリング機構にP4シグナルとSTAT3が関与していること(Endocrinology 2017, JCI Insight 2016)が明らかになった。
【研究の社会的意義】
本研究では、着床を可能にする胚受容能という視点でプロゲステロンの支配下にある着床の機構を明らかにし、子宮内環境と妊娠の科学的理解が可能になった。母体による初期胚発育に対する影響が明らかになったことで、不妊症の原因解明だけではなく、胎児発育不全や妊娠高血圧症候群などの妊娠中の合併症の解明、出生後の児生育との関連についての理解や生活習慣で起こる各種疾患の病因・病態の解明にまでつなげるための道筋ができた点で、学術的・社会的意義のある研究成果が得られたといえる。また、子宮腺筋症の薬物療法抵抗性の機序を明らかにすることができ、子宮腺筋症の新たな治療選択への基盤的知見が得られた点でも、社会的意義がある。
【研究代表者】