労働市場の近代化と人的資本形成に関する比較史的研究
【研究分野】経済史
【研究キーワード】
労働市場 / 人的資本 / 近代化 / 教育 / イギリス / 日本 / 技能 / 標準化 / 労働 / 市場 / 経済史 / 教育学 / 学校
【研究成果の概要】
本研究は、19-20世紀初頭のイギリスと日本において、人的資本や労働供給の変化を通じて、近代化に対応する標準的な労働力が形成されつつあったことを明らかにした。イギリスに関しては、19世紀前半に識字能力の低下がみられた一方で読む能力が上昇する可能性があったこと、19世紀後半には学校教育によって技能職への基礎的知識が普及したことが示された。技能にグレードを導入し職場内外の評価に対応する労働組合もあった。日本に関しては、労働供給の年給化や近接化などの労働市場の変化、国民教育を通じた児童の労働力としての訓練、さらに徒弟教育の近代化が試みられたことなどを示した。これらは計4回の国際学会等で報告された。
【研究の社会的意義】
本研究の学術的意義は、19-20世紀の人的資本と労働供給の変化を、「労働力の標準化」という概念を用いて論じた点である。これは社会の幅広い階層における基本的な知識や技能の普及と労働供給を論じることで、「労働過程論争」が論じたような熟練の消滅と残存の中間に新たな説明項を与え、労働力の質の変化、労働と近代化に関して新しい理解 を与えるものとなる。また、本研究が教育史学との連携によって得た青少年期を広くカバーする学校教育の歴史的形成過程に関する知見は、近年に欧米で提起されている「技術と教育の競争」とも関連しており、今日の各国の教育や労働の現状の理解をたすけるものであり、その社会的意義は大きい。
【研究代表者】