発達期レム睡眠が育てるノンレム睡眠の成熟 =マウス臨界期操作によるアプローチ=
【研究キーワード】
睡眠 / 視覚 / 臨界期 / 脳発達 / GABA抑制系 / 可塑性 / NMDA受容体
【研究成果の概要】
赤ちゃんや子供にとって睡眠は脳と身体の健やかな成長に重要であると信じられている。発達期にはレム睡眠が豊富で、遅れてノンレム睡眠が成熟してくる。しかし幼弱かつ急速に成長する動物の睡眠を長期的に観測し操作することは容易でないため、発達時のレム睡眠とノンレム睡眠にどのような関係があるのか知られていない。申請者の研究チームはマウス発達過程と脳の臨界期を人工的に分離することに成功し、臨界期前と後の睡眠を大人のマウスで比較・解析することが可能となった。これを利用して本研究は睡眠発達にともなう分子・神経レベルでの変化、発達期レム睡眠がもたらすノンレム睡眠の成熟への影響を明らかにすることを目的とする。子供の睡眠がもたらす脳の成長の科学的基礎や、睡眠不全による発達障害への関与について本質的な理解につながると期待される。
従来この種の発達研究は小さく幼弱な動物を使用しなければならなかった。しかし脳のサイズをはじめ可塑性とは関連しない多くの過程までもが著しく変わる発達期で詳細な解析は困難だった。当研究室は大人の動物に皮質可塑性(眼優位性)を発現させる動物モデルを確立している。抑制性伝達物質GABA合成酵素GAD65欠損マウス(GAD65マウス)は通常の臨界期を示さない。しかしGABAA受容体機能を一時的に促進する薬物(ディアゼパム)投与で野生型同等の可塑性が復活させられる。これにより生理的に安定した大人の「臨界期」モデルマウスで詳細な脳活動の操作と分析が可能となった。
本年度はレム睡眠を制限した野生型・GAD65マウスの視覚皮質と海馬を採取し、NMDA受容体サブユニットなどシナプス可塑性に関与する分子群をウエスタンブロッティングにより定量した。レム睡眠量と特定分子の発現量との相関において野生型とGAD65マウスに有意な差を検出した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)