生物の階層性を重視した学習・記憶機構の研究
【研究分野】動物生理・代謝
【研究キーワード】
学習 / 記憶 / CREB / 単一細胞解析 / in situハイブリダイゼーション / 免疫組織化学 / qRT-PCR / モノアラガイ / C / EBP / mRNA / 味覚嫌悪学習 / スプライシング / NO合成酵素 / 長期促通 / アンチセンス・オリゴヌクレオチド
【研究成果の概要】
本研究では,脳の構造は簡単ではあるが複雑な学習を修得できる軟体動物腹足類のヨーロッパモノアラガイ(Lymnaea stagnalis)を用い,その味覚嫌悪学習の機構を例にとって,脳の階層性を確実に反映した学習・記憶機構の理解に努めることを目的とした.研究代表者らは,ヨーロッパモノアラガイの味覚嫌悪学習の鍵を握るキー・ニューロン(Cerebral Giant Cell)を同定することができた.そして,脳の階層性をトップダウンで降りてくることによって,長期記憶形成時にこのキー・ニューロン内では,cyclic AMP respohsive element binding protein 1(CREB1)の活性化が起こっていることもわかった.そこで,モノアラガイのCREBをクローニングし,in situハイブリダイゼーション法ならびに免疫組織化学法によって,それらが局在するニューロンを同定した.上述のキー・ニューロンにおいてもCREB1およびCREB2のmRNAの存在が確認された.以上の結果から,モノアラガイを用いることによって,一連の階層性に正確に沿ったボトムアップ法での解析が可能となることも示すことができた.代表研究者の講座において,定量real-time RT-PCR装置が導入され,この装置のお陰で,単一神経細胞内のCREB mRNAが定量解析できるようになった.そこでキー・ニューロン一つを単離して,CREBのmRNAコピー数を測ったところ,CREB2のmRNAが数百コピー存在することを示すことができた.この結果は,学習・記憶に伴う遺伝子発現量変化を,たった一つのニューロン内で定量測定する道を拓いたものと言える.
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2002 - 2003
【配分額】4,200千円 (直接経費: 4,200千円)