20世紀後半のアメリカ文学・文化におけるトラウマとしての奴隷制度の表象
【研究キーワード】
trauma / slavery / Lovecraft Country / neo-slave narrative / Candyman / spectrality / testimony / diaspora / Octavia Butler / Kindred / postmemory / Sankofa / Postmodernism / Trauma / Slavery / Afrofuturism / Dark tourism / Memory / Haile Gerima / 奴隷制度 / トラウマ / Alice Walker / August Wilson
【研究成果の概要】
早稲田大学教育・総合科学学術院学術研究第70号1~19ページ(2022年3月)に論文"Where is your fire?: Horror, Traumatic Pasts and the Becoming of History in Lovecraft Country (HBO 2020)"を発表した。本作品はH.P. Lovecraftの超自然的な物語に、1950年代をはじめとするアメリカの様々な歴史的出来事を融合したものである。全10話で構成されており、各エピソードにはそれぞれアメリカの奴隷制度、ジム・クロウ法、エメット・ティル殺害など、様々な歴史的出来事、人物といったノン・フィクションとフィクションというジャンルの混交を特徴としている。語りの面でも時間軸が直線的に語られず、視聴者の積極的な関与が要求されており、内容・形式的にもハイブリッドなテキストである。本論ではこの混交を"Collage Aesthetics"として積極的に評価し、ジャック・デリダの憑在論とジル・ドゥルーズの歴史生成の理論に基づき、本作品にみられる奴隷制度の亡霊性と歴史の攪乱的要素を指摘した。
また、中央大学人文科学研究所『人文研紀要』98号(頁未定2023年度刊行)に論文(単著)"Candyman, the Specter of Past, Present, and Future―The Analysis of Candyman (2021) through Hauntology―"を発表した。本論考ではCandymanを奴隷制度とトラウマの準拠枠に則って分析した。デリダの憑在論以外にフレドリック・ジェイムソンの"spectrality"という概念に基づき、本作品中に見られる歴史攪乱性を確認した。さらに、現在、過去、そして未来までも見据えた対ネオリベラリズム人種観が提示されている点を指摘した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)