大脳辺縁系における認知・情動・記憶と行動の統合システム
【研究分野】神経・筋肉生理学
【研究キーワード】
情動 / 記憶 / 認知 / ドパミン / 大脳辺縁系 / ニューロン活動 / 報酬 / 行動 / 免疫 / サイトカイン / ストレス
【研究成果の概要】
I.認知・情動・行動出力過程における大脳辺緑系ニューロンの応答性
聴覚または視覚要素刺激、およびそれらの組み合わせによる構成連合刺激-報酬連合課題に対するラット前部帯状回、扁桃体,および後部視床領域ニューロンの応答性を解析した。その結果,前部帯状回は,認知的ならびに情動的要因を行動実行に転換する過程で,扁桃体基底外側核は連合学習に、後部視床領域は報酬刺激の認知および報酬予測に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
II.認知・記憶-行動出力過程における大脳辺緑系ニューロンの応答性
マウス、ラットおよびサルを用いて場所移動学習課題遂行中の海馬体-側坐核系および外側中隔核ニューロンの応答性を解析した。その結果、1)ラット外側中隔核は,空間,報酬および内的感覚の統合処理過程に重要な役割を果たしている,2)海馬体よび側坐核ニューロンはいずれも報酬応答性(ICSS報酬に依存した応答)および空間応答性を有しているが,海馬体ニューロンでは.報酬よりは空間応答性が強く,逆に側坐核ニューロンでは,空間よりは報酬により強く関連して応答する,3)海馬体ニューロンの場所応答は、単なる場所の認知だけでなく、動物の移動経路の学習と関連していることが明らかになった。
III.内側側頭皮質における顔・表情の認知・記憶機構
サル側頭皮質(下側頭葉皮質,上側頭溝皮質)からニューロン活動を記録し,遅延見本合せ課題(見本およびテスト刺激が同一人物であるかどうか判定する課題)に対するニューロンの応答性を解析した。その結果、側頭溝皮質では顔の向き(方向)が、下側頭葉皮質では既知性のある特定の個人の顔が再現されていることが示唆された。
IV.大脳辺緑系における物質機構
D2受容体ノックアウトおよびワイルドマウスを用いて、画像医学的、行動学的および神経生理学的解析を行なった結果、1)ドパミンは、大脳皮質,線条体,海馬および視床の活動性を調節している、2)側坐核ニューロンの報酬予期応答にD2受容体が重要な役割を果たしている、3)D2受容体ノックアウトマウスでは不安が亢進していることが示唆された.
【研究代表者】