九州地域における精神障害者支援施策の形成と発展に関する総合調査研究
【研究分野】社会福祉学
【研究キーワード】
社会的入院 / 地域格差 / 社会復帰施設 / 精神科病院 / 地域生活支援 / 精神障害者 / 地域移行 / 病床削減 / 社会資源 / ネットワーク / 九州 / 精神障害者支援 / 地域特性 / 施策形成 / 社会変動
【研究成果の概要】
九州地域における精神障害者支援の地域特性及び施策形成の歴史的推移を見ていく時、病床が九州に集中した特異な現象を至らしめた要因は複雑であり、かつ戦前と戦後の間には連続性と非連続の両側面が見られた。連続性の側面では、特に天皇制を中心とした近代国家成立の途上、西南戦争や士族反乱の鎮圧、地方行幸、中央直轄型地域政治体制の維持などの精神風土、及び南国の温暖な気候など自然風土を中心に1990年代に至る精神医療の展開の基本的性格(「治安」と「救貧」を中心とした収容主義)が決定づけられる。
非連続の側面では、戦後の社会保障制度の整備、国策としての民間精神病院への依存と育成策を基盤に、九州地域における様々な社会変動(都市への人口流出、農村崩壊、家族システムの弱体化、石炭産業の衰退など産業構造の変化)の影響で、経済的後進地域からの脱却に新たな産業基盤の模索および社会的対応として精神科病床の増床を促す下地が、他の地域に比べて比較的整っていたことを現地ヒアリング調査及びサンプリング・アンケート調査、文献調査等を通じて、いくつかの仮説とともに分析することができた。
今後の九州地域における精神障害者支援施策の発展の方向性として、精神病床数の多少に影響しない診療報酬体制の確立、精神障害者社会復帰施設など地域資源の質量の充足とACTに代表される地域生活支援チームの立ち上げ、医療スタッフの地域再配置の促進と研修支援が必要である。また家族支援の充実と市民団体や精神障害当事者会の育成の取り組みを充実することも重要である。
【研究代表者】