高分子と炭酸カルシウムの高次積層化によるバイオミネラル型有機/無機複合体の構築
【研究分野】高分子合成
【研究キーワード】
バイオミネラリゼーション / 有機無機複合体 / 炭酸カルシウム / アラゴナイト / カルサイト / 薄膜 / 相互作用 / 自己組織化 / 有機 / 無機複合体 / 機能性高分子 / 高分子
【研究成果の概要】
自然界における真珠や貝殻などのバイオミネラルにおいては,無機結晶と生体高分子が精緻な積層構造を形成し,これが強靭さや独特の光沢を発現している。このようなナノレベルでの精密構造を人工的に構築できれば,環境低負荷の新しい高性能/高機能材料が得られると考えられる。本研究においては,天然高分子のキチンやキトサンの薄膜あるいは繊維上に,炭酸カルシウム飽和水溶液から,均一な炭酸カルシウム薄膜を形成させ,有機高分子/無機複合薄膜を作製することに成功した。形成する無機薄膜の均一な厚みは,条件により0.6μmから1.0μmまでに制御することができた。すなわち,炭酸カルシウム水溶液中に,ポリアクリル酸・ポリアスパラギン酸などのカルボキシル基含有高分子がある一定濃度存在する場合,カルボキシル基と相互作用可能な官能基を有する高分子固体マトリクス上に炭酸カルシウムの薄膜が形成することを見出した。さらに,高分子と炭酸カルシウム薄膜の形成を交互に行うことにより,積層した有機/無機薄膜を作製できた。炭酸カルシウムには,カルサイト・アラゴナイト・バテライトの三種の結晶形(多形)があるが,天然真珠を構成しているのはアラゴナイトである。このアラゴナイトは人工的に形成させるのは最も困難である。先に述べた薄膜形成系においても,得られたのはカルサイトとバテライトの薄膜のみであった。しかし,さらにマグネシウムイオンを添加することで,アラゴナイトの薄膜を形成することにも成功した。生体から抽出したタンパク質ではなく,このような単純な高分子や無機イオンの相互作用で,多形が制御された炭酸カルシウムの薄膜が形成した例はなく,新しいマテリアルの構築手法として意義が大きいと考えている。
【研究代表者】
【研究種目】萌芽的研究
【研究期間】1998 - 1999
【配分額】2,100千円 (直接経費: 2,100千円)