発達臨床ならびに感性心理学的視点から見る日本の育児文化:親子画の分析を通して
【研究分野】教育・社会系心理学
【研究キーワード】
浮世絵 / 母子関係 / 精神分析 / 視線 / 共視 / 性格特性 / 文化 / アジア / 育児文化 / 印象評定 / 身体配置 / 画像処理 / 親子関係 / 親子画 / 発達臨床心理学 / 感性心理学
【研究成果の概要】
(1)日本の浮世絵などの家族画には、「母子が共に同じ対象を眺める」図柄が多く、これが我が国の育児文化や臨床文化を反映することは間違いがないので、この「心」を論じた。(2)描かれた親子像を、そのモチーフ・親子の配置(身体接触の度合い)・親子それぞれの視線の方向性といった多様な観点から分類・評価し、「身体接触のある共視」などのカテゴリーを得た。(3)浮世絵とその変形図版を用いて、母親、女子学生、男子学生を対象に、視線方向の判断と状況の解釈、登場人物の印象を調べた。視線方向の判断には差が見られなかったが、解釈と印象評価に関しては性差、役割差が示された。これを自己投影の観点から考察し、目を向けていない対象も判断や解釈、印象に影響することが示され、無自覚的な処理の点から議論した。さらに、400sec以上の提示時間(cueing paradigm)であれば、共同注視状況の対象に対して認知が促進されることが示された。(4)SD法により浮世絵に表れる母子関係に関する印象評定調査を行った.その結果,印象評定に関して快活性因子と情緒性因子が得られた.快活性因子には一般性格の非誠実性が,情緒性因子には情緒不安定性が関っていた。(5)近現代アジアにおける356の親子画を収集し、関係を分析した。国によって関係のパタンが異なり、浮世絵に見られたような密着一体は、フィリピンなどで優勢だが、多くの国で抑制されている。ベトナム、台湾などで共視の関係が多い。複数の人物がしばしば描かれ、それを通して子どもの関心が外に向かい、分離が進み母親が自由になってゆくという構図がみられた。
【研究代表者】