脱灰・タンパク質分解包括モデルによる根面う蝕機序解明と予防・治療法の検討
【研究キーワード】
根面う蝕 / 脱灰 / タンパク質分解 / 細菌 / 唾液
【研究成果の概要】
う蝕の予防法および治療法を検討するには、pHに加えカルシウムやフッ素など、複数のイオン濃度を同時かつ連続的に測定できる装置の開発が必要である。今年度は口腔内微小環境下で連続的にCa2+濃度を測定可能なマイクロデバイスの開発を目的とし、全固体イオン選択電極とマイクロ流路の統合について検討を行った。全固体イオン選択電極の小型化のために、PETフィルム上に金を蒸着し、直径3 mmの穴を開けたラミネートフィルムで金電極をラミネート加工した。センサ部分に導電性ポリマPEDOT(PSS)を滴下して加熱硬化し、さらにカルシウムイオノフォアETH129を含むイオン選択膜を滴下・風乾して成膜した。またマイクロ流路に小型化した全固体イオン選択電極を組み込むために、ポリカーボネート上に金を蒸着し、同様の手順でイオン選択電極を作製した後、流路を切削したアクリル板を接着して流路デバイスを作製した。小型化した全固体イオン選択電極とイオン濃度に対する電位応答は26.6 mV/decの感度を示し、理論的なネルンスト応答に近い応答を示すことから、口腔内のカルシウムイオン濃度範囲を測定することが可能と考えられる。また、全固体イオン選択電極を流路デバイスへ組み込んだ場合、0.01 Mナトリウムイオンを含むカルシウムサンプル溶液で、10-5から10-3 Mの範囲で電位依存性が確認され、部分的にネルンスト応答を示すことが分かった。
さらに前年度に構築したタンパク質分解酵素に特異的な蛍光試薬と蛍光実体顕微鏡を用いて、酸により脱灰した歯根面からのタンパク質分解酵素を検出したモデルにより、種々の材料、薬剤等のタンパク質分解酵素の抑制作用についても検討した。その結果、フッ化ジアンミン銀にタンパク質分解酵素活性抑制効果があることが示唆された。
【研究代表者】