腸内細菌叢由来代謝物質による寿命延伸効果の検証とメカニズム解明
【研究キーワード】
腸内細菌叢 / 代謝物質 / 寿命 / メタボローム
【研究成果の概要】
腸内には多種多様な細菌叢が生息しており、腸内細菌叢の構成や細菌叢が産生する代謝物質は、病気の発症や健康維持に関与している。腸内細菌叢の構成や腸内・血中の代謝物質は加齢によって変化しており、加齢によって腸内で変化する代謝物質の一部が線虫の寿命に影響を与えることが本研究で明らかになった。このことからこの代謝物質は、寿命の延伸を促進する腸内細菌叢由来代謝物質の有力な候補であると考えられる。しかし、マウスやヒトなどの哺乳類でこの物質が老化や寿命に与える影響や、この物質が寿命に影響を与えるメカニズムは未解明である。そこで本研究では、本物質が哺乳類の寿命に与える影響の検証を目的とした。2021年度は、本物質が線虫以外の生物種の寿命に与える影響を検証するため、マウス、ヒト正常二倍体繊維芽細胞、ショウジョウバエの3種の生物種について投与実験を行った。その結果、ヒト正常二倍体繊維芽細胞の最大分裂回数と、ショウジョウバエの寿命については、本物質による寿命延伸効果は認められなかった。マウスについては寿命が2年程度と長いため、現在も実験進行中である。次に、線虫における本物質の寿命延伸メカニズムの解明に取り組んだ。野生型及び本物質が蓄積すると予想される遺伝子を欠損させた線虫の寿命を比較したところ、欠損株で野生株よりも寿命が延伸することが明らかとなった。この線虫に対してメタボローム解析を行ったところ、欠損株では本物質が野生株よりも高濃度に存在することが明らかとなった。今後は、これらの線虫のRNA-seq解析を行い、寿命延伸のメカニズムに関わる遺伝子を明らかにする予定である。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)