人口高齢化が政府の公共財供給に与える影響―政治経済学的アプローチ―
【研究キーワード】
人口高齢化 / 政治経済学的アプローチ / 教育 / インフラ投資 / 福祉 / 足による投票 / パネルデータ分析 / 公共投資 / 地方分権 / 国際比較
【研究成果の概要】
本研究は、人口高齢化が政府支出、課税、規制にどのような影響を与えるかを、日米データを使って分析することを目的としている。高齢者は若い世代と比較して、長期間にわたり便益を発生させる政策よりも、短期に集中して便益を生み出す政策のほうを好むと考えられる。したがって、高齢化が進む地域では、教育やインフラへの支出が少ないと想定される。また、高齢化が進行する地域では、高齢者も負担しなければならない消費税から直接的に負担を負わなくてもすむ法人税へのシフトが生じるかもしれない。さらに、企業負担を増加させる最低賃金引き上げに対して、高齢者は強い反対はしないと想定される。
人口高齢化は人的・物的資本投資を抑制するという政府支出配分に関する仮定の検証は、2020年度にほぼ完了しており、2021年度は頑健性のチェック、推定結果の日米比較を中心に分析を続けた。そこから、高齢化率だけでなく、人種構成、地域間の人口流動性といった人口学的要因が日米間の結果の違いを生み出しており、特に人口流動性の差異は地理的・歴史的・制度的要因に影響を受けることから、人口高齢化の影響を予想するときには、国によってこれらの要素に違いがあることを考慮する必要があると結論づけた。
地域による法人税率設定や最低賃金設定についても、日米のパネルデータを使って分析を行った。その結果、高齢者の多い地域であっても消費税から法人税へのシフトは起きておらず、高齢化率は最低賃金に有意な影響を与えていないことがわかった。前者については、高齢者は金融資産を多く保有しており、企業負担の増加が株価等資産価値の低下につながることを恐れている可能性があること、後者については、介護従事者の労働市場で需要独占が生じており、最低賃金引き上げは必ずしもサービス価格の上昇につながらないこと、などが主要な理由であると考えるに至った。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
宮里 尚三 | 日本大学 | 経済学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)