環境倫理への哲学的人間学アプローチ(所有概念の検討を軸として)
【研究分野】倫理学
【研究キーワード】
環境倫理 / 哲学的人間学 / 所有 / 景観 / 風土 / 空間 / 身体 / 現象学
【研究成果の概要】
本研究は、英語圏の社会運動を背景とする環境倫理学の実践と1920年代のドイツで開花した哲学的人間学の理論的蓄積とを相互に突き合わせることにより、環境倫理学の哲学的再編成を図るものであり、とくにその組み替えの基軸概念として「所有」に注目するところに特色を有している。倫理学・哲学の研究者を核として、環境社会学、農業経済学、環境学、法哲学という関連領域の第一線の専門家を分担者に加えた本プロジェクトは、メンバー相互が緊密な連携のもとに各々の分担テーマを追究した。課題の性格上、研究期間終了後も作業は継続され、さらなる成果が公表されることになろう。
(1)環境倫理に直接関連する研究成果として筆頭に挙げるべきは、東北哲学会第49回大会シンポジウム(「普遍的な環境倫理は可能か」1999年10月23日)と第51回大会シンポジウム(生命・環境・技術、2001年10月20日)における徹底的な討議である。両シンポを通じて、環境倫理の組み替えのためには「地域」および「技術」という観点からのアプローチが有効であることが明らかになったものと思われる。
(2)「所有」に関しては、熊野純彦(研究分担者)が独自のレヴィナス読解に基づいた解明を進め、生命と身体の自己所有という発想を鋭く問題化した。
(3)隣接分野での成果としては、長谷川公一(研究分担者)編の『講座環境社会学』第4巻を挙げなければならない。なお彼と川本隆史(研究分担者)が編者を務める『リーディングス環境』全5巻(有斐閣)が周到な準備を経て、本年より刊行される運びとなったことを付記しておく。
【研究代表者】