光トポグラフィーを用いた高齢者の運転能力と作動記憶の評価
【研究分野】精神神経科学
【研究キーワード】
driving / Alzheimer's disease / mild cognitive impairment / NIRS / simulator / aging / frontal lobe / risk / Alzheimer' s disease / near infra-red spectroscopy
【研究成果の概要】
本研究では、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)と運転シミュレータを用いて、健常群および患者群の運転能力に関する脳基盤を検討する3つの実験を行った。
【AC110・二重課題】
NIRS装置Hitachi ETG 4000と運転操作器AC110を用いて、ハンドル操作のみの単純課題と比較した、ハンドル操作+アクセル/ブレーキ操作の二重課題における前頭葉活動を比較検討した。その結果、高齢健常群では、二重課題において、両側の前頭葉外側領域を中心にoxy-Hbの上昇を認めた。高齢健常群と若年健常群では、NIRSにおけるoxy-Hbの上昇は差がなかった。
【Teddy・運転操作課題】
運転シミュレータTeddyを用いて、安全場面の走行中と危険場面の走行中とを比較する実験を行った。若年・高齢健常群では、安全な場面を走行中と比較して、危険な場面を走行中にアクセル→ブレーキへの明らかな反応ピークが観察された。さらに、若年・高齢健常群では、危険場面走行中に左右前頭葉前方部、外側領域を中心に光トポグラフィにおける広汎なoxy-Hbの上昇を認めた。患者群全体では、アクセル→ブレーキ反応のピークが鈍で、運転行動にメリハリがなかった。危険場面走行中では、高齢健常群と比較して、患者群全体では、右前頭葉最前部の外側領域のoxy-Hb上昇が不良であった。
【Teddy・運転操作課題】
画面を黙視しているときと比較して、ハンドルとアクセル/ブレーキ操作を実際に行って安全な場面を運転操作する際は、健常群、ことに高齢健常群で両側前頭葉背外側部のoxy-Hbの上昇がみられた。一方、若年健常群では、画面を黙視しているときと比較して、安全な場面を走行中には、むしろ前頭葉正中領域のoxy-Hbが下降していた。このことは安全場面の走行という自動的な課題に際して、前頭葉正中領域はむしろデフォルトモードを呈するのではないかと推測された。
【研究代表者】