健康診断の有効性評価に関する研究
【研究分野】公衆衛生学・健康科学
【研究キーワード】
健康診断 / Evidence Based Medicine / 保健医療活動の評価 / 感度 / 費用効果分析 / 肝機能検査 / 尿検査 / スクリーニング / 特異度 / 尿糖検査
【研究成果の概要】
わが国の予防医学は二次予防である健康診断が大きな位置を占めているが、その有効性について系統的な評価は行われていない。そこで本研究は予防活動におけるEvidence Based Medicineの実践を目指し、地域や職域で行われている一般健康診断を取り上げ、その有効性を文献的・実証的に検討した。その結果、有効性評価の方法として最も強いエビデンスを与える無作為化比較試験を用いた研究では、多相項目の健康診断の有効性が示されなかった。その原因を考え、改善の方向を示すために健診が有用になるための条件を検討し、有効性確保のために満たすべき4段階(対象疾患、健診検査、精密検査、治療介入)の8条件を提示した。これに基づき、主に職域の定期一般健康診断を中心にそのすべての項目について、吟味を行った。また同時に、一部の検査項目について、上記条件に基づき新たな実証的研究を行った。その結果、肝機能検査においては実は目的疾患発見の感度が低く、より適切な他の方法が考えられること。尿糖検査では多くの場合、適切な方法で実施されておらずまた疾患発見後の治療効率が非常に低いことなどである。尿蛋白検査でも疾患発見後の介入方法が確立していないなど、多くの検査項目で問題点が明らかになった。この結果は、先行するカナダや米国の予防医療研究班報告と一致しその勧告結果をあてはめるなら、わが国の職域定期健診項目では血圧、身長・体重測定などのしか根拠を持たないことになる。加えて、従来わが国では健康診断の弊害やプライバシー保護の問題などについて十分配慮がなされているとは言い難い。こういう問題点と上記の研究結果を踏まえ、原稿健康診断項目の評価と今後の健康診断のあり方についての提言をまとめ、一般に入手できる形で発表した。また、本研究の過程でEBMのために用いることのできる簡便な計算ソフトを開発したので、統計学の解説書と合わせ出版・発表した。
【研究代表者】