翻訳における概念形成と主体変容:20世紀ドイツ・フランスの思弁的翻訳論
【研究キーワード】
翻訳の思想 / 主体の変容 / ジャン=リュック・ナンシー / プラトン / デリダ / ハイデガー / ナンシー / シモンドン / バンヴェニスト / ルロワ=グーラン / 洞窟の比喩 / 転導性 / 翻訳 / 歴史性 / 現象学 / ジャック・デリダ / フランス現代哲学 / ドイツ現代哲学 / 概念 / 主体
【研究成果の概要】
本研究は20世紀のフランスおよびドイツを中心に発現した《翻訳をめぐる思想》の内実を明らかにすることを目的とする。この目的に達するために、以下の点を解明する。(1)《翻訳をめぐる思想》が20世紀フランス・ドイツにおいて、多様な学問領域を越境しながら、いかにして新たな概念の創出と学知の編制に関与したのか、そして、概念と学知の変革可能性をどのように理論的に思考したのか。(2)この思想潮流が、主体の単独性と複数性、そして主体そのものの生成と変容をどのように思考したのか。これらの問いかけに基づき、本年度は、前年度に引き続いて、哲学者ジャン=リュック・ナンシーがギリシア哲学以来の存在論の歴史(ハイデガー)といかに対峙し、これをどのように創造的に変容させたかを検証した(前年度はナンシーがプラトン「洞窟の比喩」に関して提起した解釈をめぐる研究を遂行した)。とりわけ本年度は、プラトン対話篇『ソフィスト』における存在論およびそのミーメーシス論が、ナンシーによって「ミモントロジー」という独自の存在論へと創造的に統合されていることに着目した。ミーメーシスの問題をめぐる現代哲学の研究は、文学、美学、古典文献学、社会思想、政治哲学、等々の諸研究(ジャック・デリダ、ポール・リクール、ジャン=ピエール・ヴェルナン、フィリップ・ラクー=ラバルト、ジャン=クリストフ・バイイらの諸研究)が交錯する領野であり、ナンシーの思考はこの領野を切り開く先駆的な事例のひとつをなすものである。こうした考察にもとづき、本研究ではナンシーのミーメーシス論を再検討し、これを《思考と主体の変容》のテーマ系のもとに捉えなおした。以上の研究成果は雑誌『思想』のジャン=リュック・ナンシー特集号にて発表された。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)