Toll様受容体遺伝子多型によるH.pylori応答性単球動態と胃粘膜疾患関連性
【研究分野】消化器内科学
【研究キーワード】
H.pylori / エンドトキシン(LPS) / 遺伝子多型 / Toll様受容体 / Antrum predominant gastritis / Corpus predominant gastritis / サイトカイン / 萎縮性胃炎 / エンドトキシン / 細胞欠損領域を作製する器具 / 画像処理 / 細胞遊走 / 胃粘膜上皮細胞
【研究成果の概要】
1.細胞動態評価系の構築
研究代表者らが既に構築したデジタルタイムラプス蛍光顕微鏡にCCDカメラを接続したシステムに、新規に開発した「培養細胞の層に細胞欠損領域を作製する器具」(特願2001-328556)を応用し、細胞損傷後の細胞遊走過程を5次元デジタル画像解析系にて経時的に連続撮像し解析することを可能とした。また、画像処理には、粒子解析及び濃淡解析ソフトを応用した。
2.TLR4遺伝子突然変異C3H/HeJマウスでの検討
TLR4遺伝子の点突然変異があるC3H/HeJマウス及びその対象群のC3H/HeNマウスに、H.pylori菌液(シドニー株)、H.pylori由来LPSを経口投与し胃粘膜傷害を検討した。粘膜内好中球浸潤の指標であるミエロペルオキシダーゼ活性、脂質過酸化反応の指標としてのチオバルビツール酸反応物質量を測定した。H.pylori菌液接種による感染群では、TLR4が正常に機能しないC3H/HeJマウスにおいて、C3H/HeNに比較すると、胃粘膜内の、より著明な好中球浸潤(MPO活性の増加)と酸化ストレス(TBA反応物質量の増加)が惹起されたことから、TLR4がマウスのH.pylori感染に対して防御的に働く可能性が示唆された。なお、H.pylori由来LPS単独の経口投与では、マウス胃粘膜に有意な変化は招来しなかった。
3.ヒトTLR4(Toll-like receptor 4)の遺伝子多型について
本研究は、慶應義塾大学医学部倫理委員会の承認(受付番号13-93;2002年4月2日付)を得て実施された。インフォームド・コンセントを得られたH.pylori陽性の慢性胃炎患者のうち、定期的な上部消化管内視鏡検査をうけている患者を対象として、採血した血液10mlからDNAを抽出し、遺伝子多型解析に供した。TLR4遺伝子多型については、最近報告された日本人のSNP(single nucleotide polymorphism)のJSNPデータベースに収載されたSNPとTLR4ゲノム配列とを比較し、候補SNP部位を12ヶ所、選定した。これらの候補SNP部位を増幅するPCRプライマーを設計し正常群の患者のゲノムDNA等濃度混合物を直接シーケンシング法により解析し、ヘテロ接合率の高いSNPをプロモーター部位に1ヶ所GenBankTLR4ゲノム配列AF177765の第2209番目の核酸配列がAからGへの置換、イントロン2ヶ所に1ヶ所SNPGenBankTLR4ゲノム配列AF177765の第11771番目の核酸配列がGからTへの置換を同定した。それぞれのSNPについて熱変性高速液体クロマトグラフィー法によりタイピングを行った。2つのSNPのタイピング結果から、両者がきわめて強い連鎖不平衡にあることが示された。2209Aアレルおよび2209Gアレルの頻度はそれぞれ71%と29%であった。2209Aホモ接合体は47%、2209A/Gヘテロ接合体47%、2209Gホモ接合体は5%で、両アレルの間にHardy-Weinberg平衡が成立していた。慢性胃炎患者群38名をCorpus predominant gastritis(14例)とAntrum predominant gastritis(24例)の2群にわけ、TLR4多型との関連を検討した。結果として、胃炎の進展のtopographyで分類した2群間では,TLR4遺伝子多型に有意差を認めなかった(p=0.52)。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
小崎 健次郎 | 慶應義塾大学 | 医学部 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2001 - 2002
【配分額】3,600千円 (直接経費: 3,600千円)