P糖蛋白質を分子標的とする耐性克服療法の薬物動態学的研究
【研究分野】応用薬理学・医療系薬学
【研究キーワード】
P糖蛋白質 / 薬剤耐性 / multidrug resistance / transport / pharmacokinetics / anticancer agents / chemosensitizer / doxorubicin / docetaxel / SDZ PSC-833
【研究成果の概要】
がん化学療法を実施するうえで大きな問題となるのが、複数の抗がん剤に抵抗性を示すがん細胞の多剤耐性である。耐性発現の分子機構のひとつとして、がん細胞膜上に過剰発現したP糖蛋白質の関与があげられる。P糖蛋白質はATP分解のエネルギーを利用し、抗がん剤を細胞外へ排出するポンプである。そこで、このP糖蛋白質を分子標的とし、その機能を阻害することに基づく耐性克服療法の実現をめざして、薬物動態学的見地からの検討を行なった。以下に本課題の研究成果を記す。
1)6種類のシクロスポリン誘導体についてP糖蛋白質阻害活性を比較した。その結果、脂溶性の高い化合物ほど高い阻害活性を示した。最も強い活性を示したのはSDZPSC-833であり、臨床濃度で十分な耐性克服作用を示した。本薬が強い阻害活性を有する理由として、脂溶性並びに本薬がP糖蛋白質によって輸送されないことが考えられた。
2)P糖蛋白質発現量の異なる培養細胞を用いて抗がん剤輸送能を比較したところ、蛋白発現量と輸送活性はよく相関した。
3)新規抗がん剤ドセタキセルはP糖蛋白質によって輸送される基質であることを見い出した。また、輸送の程度はP糖蛋白質の発現量に依存した。
4)イトラコナゾールはP糖蛋白質によるジゴキシン輸送を阻害したことから、臨床で認められる相互作用は、P糖蛋白質を介するジゴキシン腎排泄の阻害に起因すると考えられた。一方、イトラコナゾールはP糖蛋白質による抗癌剤輸送を顕著には阻害しなかったが、感受性を改善させた。イトラコナゾールの耐性克服作用はビンブラスチンと併用したときに効果的であった。
5)P糖蛋白質を介するジゴキシン輸送に対する各種カルシウム拮抗薬の阻害活性は異なり、その相違にはカルシウム拮抗薬の分子量の関与が推察された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
奥村 勝彦 | 神戸大学 | 医学部・附属病院 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1996 - 1997
【配分額】2,200千円 (直接経費: 2,200千円)