アンドロゲン受容体活性を利用した難治性前立腺癌に対する新規化学療法の開発
【研究分野】泌尿器科学
【研究キーワード】
前立腺癌 / ビタミン / ヒストン修飾 / 抗癌剤 / アンドロゲン受容体 / 細胞周期 / ヒストン / ビタミンE
【研究成果の概要】
アンドロゲン応答性前立腺細胞株LNCaPおよびそのアンドロゲン非依存株に対して、vitamin Euccinate(VES)を投与したところ、アンドロゲン受容体(AR)の発現量は変化しなかったのにも関わらず、活性の低下が見られた。このAR活性低下はアンドロゲンの依存性に関わらず認められた。またAR非発現前立腺癌細胞PC-3にARおよびレポーターベクターを組み入れた実験を行ったところ、VESによる抑制が認められた。さらにRbのリン酸化およびCylinD1の発現が抑えられ、CDC45、mcmタンパクファミリーの発現が低下し、細胞はGlarrestに陥った。アンドロゲン応答領域(ARE)を用いた免疫沈降の結果から、このARの活性低下は、ヒストンH3のLysine9の脱メチル化の抑制によってコントロールされている可能性が示唆された。一方、G2 arrestを引き起こすパクリタキセルのような抗癌剤と併用することによりin vitroで抗腫瘍効果の増強が見られた。ヌードマウスにマトリジェルと一緒に移植したアンドロゲン非依存性LnCaP細胞は、抗癌剤であるパクリタキセルには抵抗性を示したが、VESを同時に腹腔内投与することにより腫瘍の増殖抑制が認められた。一方ヒストン脱アセチル化酵素の阻害薬(HDACI)をLNCaPに使用したところ、著明なAR発現の抑制が見られ、G1 arrestを誘導し、増殖を抑制した。HDACI処理前立腺癌細胞においてやはり細胞周期関連タンパクであるmcmファミリーの発現が低下しており、このためにGlarrestが起こると考えられた。このようにARの発現や機能に直接作用するような薬剤を用いることにより、アンドロゲン非依存性になった前立腺細胞に対しても効果的な治療が行われる可能性が示唆された。
【研究代表者】