アミロイド前駆体蛋白の変異導入ES細胞を用いたアルツハイマー病神経細胞の確立
【研究分野】神経内科学
【研究キーワード】
ES細胞 / アルツハイマー病 / ノックイン / 分化誘導 / 疾患モデル / 神経細胞
【研究成果の概要】
遺伝子ターゲッティング技術による家族性アルツハイマー病変異(V6421-APP)ノックインES細胞株の樹立と、ES細胞の高効率in vitro神経分化誘導法とを組み合わせることでアルツハイマー病の遺伝子型を有した高純度の神経細胞を培養皿の上に作成することに成功した。昨年度までの研究で、この神経細胞は野生型ES細胞由来の神経細胞と比較してアミロイドβ42の産生が亢進している、すなわちアルツハイマー病の表現型の少なくとも1つを有していることが明らかとなったが、今年度は更に、家族性アルツハイマー病変異導入に起因した神経細胞死の有無をTUNEL法により調べると共に、神経原繊維変化に関係したタウの過リン酸化の有無を、抗リン酸化タウ抗体を用いた細胞染色により検討した。
神経細胞死に関しては、最終分化誘導後1週目から3週目にかけて全細胞核(Hoechst 33258陽性)中のTUNEL陽性の核の割合を求めた。その結果、全細胞核中のTUNEL陽性の核の割合は野生型及びV6421-APPノックインにおいて同様のタイムコースで増加した。これは家族性アルツハイマー病変異導入に起因した神経細胞死は少なくとも最終分化誘導後3週目までは起こらないことを示唆している。
一方、タウのリン酸化は、胎児期にみられる生理的な過リン酸化が一過性に認められたが、神経原繊維変化に関孫したタウのリン酸化は最終分化誘導後6週目まで検出されなかった。
また、このアルツハイマー病モデル神経細胞をより疾患特異性の高いモデルへと改良するため、アルツハイマー病において選択的に変性する神経細胞群の一つである前脳基底部コリン作動性ニューロンへの高効率分化誘導法確立を目指した。この目的のため、choline acetyltransferaseのプロモータにEGFPを連結したトランスジーンを作成し、これを安定に導入したES細胞株を樹立した。
【研究代表者】